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2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワードを発表!

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2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワードを発表!

1月の恒例企画、2020年の不動産市場について、さくら事務所会長の長嶋氏に予測いただきました。2020年の不動産市場はどうなるでしょうか。
キーワード1「さらなる災害リスク」

まずは「さらなる災害リスク」。2019年の台風15号や19号が国内各地に甚大な水害・災害をもたらしたのは記憶に新しいところですが、気候変動のトレンドは今後もさらにその趨勢を増し、海面温度上昇による大規模な台風の発生する可能性はますます高まっています。国連IPCC第5次評価報告書によれば、気候変動システムの温暖化には疑う余地はなく、気温、海水温、海水面水位、雪氷減少などが再確認されています。

浸水可能性のある地域ではその備えを。また不動産選びではリスクのあるところはなるべく避けるといった動きが顕著になるのではないでしょうか。現時点では義務化されてはいない「不動産売買・賃貸契約時にハザードマップの説明を義務付け」「災害リスクを金融機関の担保評価に織り込み」といった動きが出てくるかもしれません。

「災害可能性に応じた火災保険料率の設定」は必至で、例えば楽天損害保険は4月から「住宅が高台などにある契約者の保険料は基準より1割近く下げる。一方、床上浸水のリスクが高い川沿いや埋め立て地などに住む契約者の保険料を3~4割高くする」としています。

また「屋根工事」のやり方にも注目が集まりそうです。昨年9月の台風15号では、神奈川県の一部や千葉県の多くの地域で屋根が飛ぶなどの被害が続出。私は被災後の千葉県館山市の現地を見て回りましたが、被災の有無の分かれ目は「屋根工事が2001年8月以降か」だったようです。1995年の阪神・淡路大震災の被害を受け、6年後の2001年に、各業界団体合同で示された「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」に沿ったやり方で工事が行われていたかどうか、ということなのです。

巨大地震( 震度7 )に耐える目的で創られたこのガイドラインより前の屋根工事は、極端にいうと、ただ載っているだけのようなケースも多く、一定以上の風量には全く対応できません。ひとたび屋根が飛ぶと、それが周辺の建物の壁を貫通するなどの二次的被害も発生し、地域全体が悲惨な状況となっていました。自身が保有する建物の屋根は、いつごろの工事なのか、どのような基準に基づいて工事されたのか、確認しておきたいところ。さらには、周辺の建物の屋根工事の状況についても、現状把握をしておく必要があるでしょう。もちろん、2001年以降の工事であってもガイドラインを無視した工事もあるかと思いますので、どのようなやり方で工事を行ったのか、工事会社に確認してみましょう。

(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

キーワード2「不動産価格のピーク感」

「不動産価格のピーク感」も鮮明です。2012年の民主党から自民党への政権交代以降、「都心」「駅近・駅前・駅直結」「大規模」「タワー」といったキーワードに象徴される物件中心に価格上昇を続けてきた新築マンション市場も、発売戸数は年々減少し、好不調を占う契約率も恒常的に70%を割り込むなど息切れ感。19年の首都圏新築マンション供給は3.2万戸の見込み(不動産経済研究所)も、2020年は3万戸を割り込む可能性が高いでしょう。供給は都区部や駅近・大規模・タワーマンションなどが中心となり、平均価格は横ばいかやや下落といったところではないでしょうか。新築マンションはもはや「高嶺の花」となり、こうした流れから中古マンション市場は過去数年のトレンド同様、好調が継続しそうです。

キーワード3「政治の動き」

政治にも動きがありそう。森友・加計問題でも揺らがなかった現政権も「桜を見る会」騒動や「IR=統合型リゾート」関連を巡る汚職事件では国民の関心も高く、内閣府支持率を大きく低下させています。国会の野党追及次第では、憲政史上最長の現政権も衆議院の解散・総選挙を決断する場面が出てくる可能性があるかもしれません。そうなると、長期政権だからこそ安定してきた株式市場や不動産市場にも悪影響は必至で、さらに「実質的な日銀による国債引き受け」といった現在のスタイルに懸念が示される展開となると、金利上昇など景気に悪影響を及ぼしかねない状況が生まれるかもしれません。金利上昇すれば当然不動産価格は下落に向かいます。

世界を見渡せば「ブレグジット」「香港デモ」「中東情勢」など世界には火種がいくらでも転がっており、世界の政治経済情勢はかつてなく不安定。有事となれば日本円やスイスフランのように通貨の強い国はデフレ、それ以外の国はインフレに向かう可能性が高く、これも国内不動産価格にはもちろん下落圧力です。「円高」「株安」「原油高」「金高」「仮想通貨高」「不動産安」といった展開です。

10月に実施された8%から10%の消費増税後、12月の日銀短観では企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が、大企業製造業でゼロとなり、前回9月調査から5ポイント低下するなどありとあらゆる経済指標が悪化する中「台風の影響もあった。趨勢を慎重に見極める」としている政府ですが、そろそろ災害の影響を差し引いた情勢も分かるはず。本格的な景気悪化が鮮明となった場合、株価や不動産価格に影響が出るのは避けられません。

そんなわけで、今年の不動産市場は「大きなトピックがなければ横ばいまたはややマイナス」「世界の政治・経済情勢に大きな変化があれば大きくマイナス」になるものと予想します。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/169986_main.jpg

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意外に高い平成世代の持ち家志向、住宅ローン選びでは…

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意外に高い平成世代のマイホーム志向、住宅ローン選びでは…

カーディフ生命が実施した調査で興味深いのは、生活価値観や住まいについて「平成世代」「ロスジェネ世代」「バブル世代」に世代を区分して比較している点だ。経済・社会的背景が異なる世代の価値観などの違いは、どういった点に表れるのだろうか?【今週の住活トピック】
「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施/カーディフ生命シェアリングが浸透した平成世代でも、家や車は買う派が8割

まず、世代区分とその特徴を見ていこう。
● 平成世代:平成生まれおよび主にゆとり教育を受けた世代(20~34歳)
● ロスジェネ世代:主にバブル崩壊の影響を受けている世代(35~49歳)
● バブル世代:主にバブル景気時に就職した世代(50~59歳)

ロスジェネとは、ロスト・ジェネレーション=失われた世代ということだ。バブル崩壊後の就職氷河期に新規卒業生となった世代で、いまだにその影響が及んでいると言われている。その後の平成世代は、比較的堅実で、ワークライフバランスを重視する世代と言われている。

まず、持ち家志向を見ると、意外にも世代間であまり変わらないという結果だった。

それぞれに「買う」「どちらかというと買う」「借りる」「どちらかというと借りる」「利用しない・関心がない」を選ぶ形式で、「家」について聞いたところ、買う派は平成世代で78.1%、ロスジェネ世代で78.4%、バブル世代で78.8%と変わりがなかった。

「借りる」にはシェアリングやサブスクリプションを含むとしているが、実は「車」について聞いても、どの世代も8割近くが買う派で、シェアリングに慣れつつある平成世代でも、家や車は買う派が大勢を占めた。

平成世代は家族とつながる場としての価値観を重視

一方、世代間で違いが見られたのは、住宅に関する価値観だ。

平成世代の価値観が特に高いのは、「家は家族が団らんする場所」(平成世代52.5%)、「家族が思い出を刻むもの」(平成世代40.2%)の2項目。「友人や仲間を招いて交流する場」(平成世代19.5%)も他の世代より高いことから、平成世代が家に求めるものは、家族や仲間とつながる場という意味合いが強いということだろう。

住宅に関する価値観(複数回答)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

住宅に関する価値観(複数回答)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

一方、バブル世代が特に高いのは、「老後も暮らせる安心感を持てるようにする」(バブル世代53.4%)。ただしこれは、社会背景というよりも年齢的な影響が強いのだろう。また、世代で共通したのは、「家は仕事の疲れをいやす休息場所」(平成世代51.2%、ロスジェネ世代52.8%、バブル世代54.1%)だった。

平成世代は住宅ローン返済への不安が強く、保障を手厚くしている!

次に、各世代のうち住宅ローンの利用者に限定して調査した結果を見ていこう。

住宅ローン返済への不安は、想定した通り、平成世代で強くなる傾向(「不安を感じた」平成世代74.1%、ロスジェネ世代69.2%、バブル世代57.9%)が見られた。若いほど返済期間が長く残っているうえ、収入の安定性や年々収入が上がる期待をしづらいという背景もあるだろう。

住宅ローン返済への不安(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

住宅ローン返済への不安(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

面白いのは、不安の裏返しとして、住宅ローン契約時に加入が求められる団体信用生命保険(以下、団信)で保障を手厚くしている点だ。死亡保障だけの一般的な団信に加え、がん保障などの特約を付けている比率が50.9%とかなり高くなっている。

加入している団信保障の内訳(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

加入している団信保障の内訳(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

住宅ローンの団信でプラスできる保障は多様に

団信では、住宅ローンを借りた人が死亡したり、高度障害状態になったりしたときに、住宅ローンの残額を完済する保険金が金融機関に支払われる。その半面、死亡と高度障害ではない理由で返済不能になっても、保険金が下りることはない。

そこで近年は、病気などで返済不能になったときも団信の対象にする特約が多様化している。

代表的なものが、「がん保障」や「三大疾病保障」、「八大疾病保障」など。三大疾病は、死亡率の高い悪性新生物(がん)、脳卒中、急性心筋梗塞が対象で、八大疾病は、三大疾病に生活習慣病といえる五疾患(高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)を加えたもの。ほかにも、病気やけがで一定の就業不能状態になったときに保険の対象となる「就業不能特約」などもある。

特約を付けて保障を手厚くすれば、別途保険料を支払ったり、保険料分の金利が上乗せになったりするのが一般的だ。不安だからと特約を手厚くするほど、負担も増えることになる。

ただし、金融機関によって用意している特約に違いがある。さらに、同じような名称の特約でも、どういった状態になると対象になるのか、いつ保険金が支払われるのか、保険料の負担はどうなるかが異なっている。特約を付けて該当する疾病になったとしても、所定の条件に合致しなければ保険金が支払われないということもあるので、それぞれの内容をしっかり検討する必要がある。

不安を解消するには、ローン特約を付けるだけでなく、一般的な生命保険や医療保険なども視野に総合的に判断したり、貯蓄で備えたりする選択肢もある。自分はどのリスクに弱いのかなど、よく分析したうえで対策を立てるとよいだろう。

さて、時代背景を受けて、平成世代はいろいろなことへの不安が強く、対策も検討していることがうかがえる結果が目立った。一方、節約生活が苦手なバブル世代は、長寿化によってまだ長い人生を生きることになる。老後に向けて時間をかけられる世代ではないので、今のうちにライフプラン・マネープランをきちんと見直しておく必要もあるだろう。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/170074_main.jpg

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テレワーク導入に900社が理解示さず。流山市の民間シェアオフィスが挑む高い壁

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テレワーク導入に900社が理解示さず。流山市の民間シェアオフィスが挑む高い壁

テレワーク(リモートワーク)の導入が推進されてはいるものの、まだ十分に普及しているとは言えない。企業におけるテレワークの導入率はわずか19.0%(総務省「平成30年 通信利用動向調査」)。「会社に制度はあっても、実際に使っている人はいない」という話を耳にすることも多い。

そんななか、テレワークを千葉県流山市で定着させようとしている人がいる。都内(または全国)の企業に所属しながら流山で働くことを実現するシェアサテライトオフィス「Trist(トリスト)」を運営する、尾崎えり子さんだ。トリスト立ち上げまでの道のりを聞くと、日本でのテレワークの定着が難しい現状が見えてきた。

「キャリアを消さないと地元で働けないなんて」

ワーキングスペースを提供するだけではなく、テレワークを初めて実施する企業や従業員をサポートするトリスト。通勤時間を理由に一度は仕事をあきらめた母親たちなどの再就職を含め、50名以上がTrist(トリスト)を活用している。

尾崎さんがトリストを立ち上げた背景には、自身が子育て中に思うような仕事に就けなかった経験がある。第一子を出産後、流山市から都内の企業に通勤していた尾崎さんは、子どもの体調不良で保育園に呼び戻されることが多く、思うように仕事ができない日々が続いた。「こんな状況では仕事と子育ての両立は厳しい」と思い、第二子の出産を機に退職を決意する。

シェアサテライトオフィス「Trist(トリスト)」を運営する尾崎えり子さん(撮影/片山貴博)

シェアサテライトオフィス「Trist(トリスト)」を運営する尾崎えり子さん(撮影/片山貴博)

地元で就職先を見つけようとするが、選択肢は少なく、コンビニやファストフード店のアルバイトの面接にも出向いた。しかし、その扉が開くことはなかった。

「都内の企業で経営コンサルティングの仕事をしたり、企業内起業で社長をしていた私は『キャリアがありすぎる』と言われたんです。それで、他のお母さんたちはどうやって仕事を見つけているんだろう?と思ってママ友に聞いてみると、かつて外資系金融機関で営業をしていた友人は、そのキャリアを履歴書には書かずに、大学時代のカフェバイトの経歴だけを書いてやっと小売店でのアルバイトに採用されたそうなんです」

「キャリアを消さないと働けないなんておかしい」。そう思った尾崎さんは現状を変えるべく、地元でキャリアを活かして働ける場所をつくる決意をした。「日本の労働人口は、今後ものすごい勢いで減少していきます。ママを救いたいという気持ちではなく、今まで労働に参加できていなかった人たちが働きやすい環境をつくってこの国をなんとかしなければという気持ちでした」

「ママなんてバイトで満足でしょ」テレワークに理解を示さない企業

トリストではワーキングスペースの提供だけでなく、テレワークの教育プログラムを企業と個人双方に行っている。日本マイクロソフト社とともにEmpowered JAPANというテレワーク教育プログラムを立ち上げた。テレワーカーとしての姿勢や心構えを尾崎さんが直接指導するのに加え、労務管理やセキュリティ、クラウドでの共同作業なども各専門家がレクチャーする。講座の中にはテレワーカーの採用を希望する企業へのテレワークインターンも組み込まれている。その後、希望企業にはTristで採用説明会を開催。採用に至った場合の紹介料は発生せず、ワーキングスペースの席料のみ企業から支払われる仕組みだ。

トリストで働くには、テレワークを前提に新たに雇用してもらう方法と、流山から都心の企業に通勤している人が会社にテレワークを許可してもらう2つの方法がある。後者の場合は尾崎さんが必要に応じて打ち合わせに同席し、責任者を説得するサポートをしてくれるというから心強い。

トリストで教育プログラムを受講している様子(写真提供/Trist)

トリストで教育プログラムを受講している様子(写真提供/Trist)

トリストのシステムに賛同してくれる企業を増やすべく、尾崎さんが営業した企業は実に960社。ところが、そのうち共感してくれた企業はたったの60社だった。

「一体いつの時代の人権教育の影響なんだろうと思ってしまうくらい、信じられないような発言をする方がたくさんいらっしゃいました。次の言葉は、私が実際に企業の担当者の方からかけられた言葉です」

「あなたが3人目、4人目を産めば少子化は解決するんじゃないですか?」
「あなたたちみたいに働く女性が多いからこんな社会になってしまったんですよ」
「お母さんなんて3時間パン屋さんでバイトすれば満足でしょ?」

尾崎さんは「悔しくて、噛み締めた唇から血が出るほどだった」と当時を振り返る。テレワークの必要性を認めてもらえないどころか、自分自身が見下されている。このままでは日本は変わらないのに、どうして分かってくれないのか。

「今後日本は大介護時代に突入します。そのとき、マネジメント層の人たちもテレワークが必要な状況に陥ります。そうなる前に企業は今から試行錯誤して、自分たちに合ったテレワークのやり方を見つけなくてはなりません。本当に必要になってから慌てふためいても遅いんです」

日本でテレワークが浸透しない3つの理由トリストのエントランス(写真/片山貴博)

トリストのエントランス(写真/片山貴博)

トリストのミーティングスペース(写真/片山貴博)

トリストのミーティングスペース(写真/片山貴博)

地元でテレワークができれば、これまでのキャリアを活かして働きながら、家族との時間も大切にできる。いいことばかりのように思えるが、なぜ日本でテレワークは浸透しないのだろうか。

尾崎さんによると3つの理由がある。1つ目は「法律」の問題。特に中小企業にとっては、労働法上テレワークを使いづらい環境になっているという。

2つ目は「マネジメント」の問題。今マネジメント層にいる人たちは、会社に通勤することで成功してきた人たち。そのため、部下が目の前にいないと、「マネジメントができなくなるんじゃないか」「結果を出してもらえないんじゃないか」「サボるんじゃないか」といった不安を感じてしまう傾向にある。

3つ目は「セキュリティ」の問題。例えば人事の仕事は「セキュリティレベルが高いからテレワークはできない」と言われるが、解決の糸口は業務を棚卸しすることで見えてくる。具体的には、「評価」の業務はセキュリティレベルが高いとしても、「スカウトメールの送信」や「媒体への求人情報の掲載」といった業務はそこまで高くはないはずだ。その場合、週2日は本社で評価業務を行い、週3日はテレワークでその他の業務を行うといった対応が検討できる。

尾崎さんは「今まで『テレワークは難しい』と言われていた業界や職種でこそ挑戦したい」と力強く語る。

往復3時間の通勤から解放され「心の余裕が全然違う」写真左からトリスト利用者の出梓さん、梁瀬順子さん(写真/片山貴博)

写真左からトリスト利用者の出梓さん、梁瀬順子さん(写真/片山貴博)

実際にトリストでテレワークをしている利用者の話を聞いた。1人目は3人のお子さんを育てる梁瀬(やなせ)順子さん。子育て環境を求めて流山市に引越す前は、埼玉県の企業で正社員として働いていた。2019年4月からトリストでスタートアップ企業のバックオフィス業務をしている。

「テレワークを始めた当初は、相手の雰囲気が分からないことに戸惑いはありました。でも実際に会うことは少なくても、相手の顔が見えて話を聞くことができれば、お互いの温度感は十分伝わります。言葉だけのコミュニケーションで足りない場合は気軽にテレカン(電話会議)をしています」

さらに梁瀬さんの働く会社では全てのプロジェクトの情報がオープンにされており、通勤している社員とテレワークの社員との間の情報格差はない。そのため、「会社に行っていないからといって、置いてかれているという感覚はありません」

アパレル企業で働きながら2人の子どもを育てる出梓(いで あずさ)さんも、「必要な場合はオンライン会議ができるので、現場との時差は感じない」と話す。

「トリストでテレワークを始める前は、流山から会社に往復3時間かけて通勤していました。毎日疲労困憊でしたが、今は通勤時間がなくなったので時間が生まれ、大好きな仕事を続けられています。その分夫にも子どもにも、余裕を持って接することができています」

またテレワーカーを雇う企業からも、トリストを評価する声が上がっている。尾崎さんは「テレワークがうまくいっていない」という声をランチ会などで拾い上げると、「いまトリストではこうした問題で悩んでいる方がいます。もしお心当たりがあるようでしたら改善をお願いします」というように、発言者の名前を伏せて企業に対応を促している。企業からは「尾崎さんがアドバイスしてくれるので、まるでテレワークのコンサルを導入しているよう。テレワーカーの退職防止にも役立ち助かっている」という言葉をもらったこともあるそう。

尾崎さんのお話を聞いて思ったのは、日本でテレワークが普及しない根本的な要因の1つに、企業の古い価値観があるということ。これを変えていくのは相当難しいように思えるが、実際にテレワークを導入してみると、労使ともに心地よさを感じる事例がトリストからいくつも生まれている。尾崎さんの言葉で動かなかった900社にも、大切な社員を辞めさせない手段の一つとして、テレワークがあるという認識を持ってほしいと願う。

次回は、今回トリストの利用者としてご登場いただいた梁瀬さんと出さんのお二人が感じたテレワークの必要性と、テレワークを始めて感じた変化について、具体的にお伝えする。

●取材協力
Trist(トリスト)元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/170115_main.jpg

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“子育てに人気の街”弊害も。テレワークが変える郊外の子育て

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“子育てに人気の街”弊害も。テレワークが変える郊外の子育て

前回の記事「テレワーク導入に900社が理解示さず。流山市の民間シェアオフィスが挑む高い壁」では、千葉県流山市で子育て世代の母親・父親などのテレワークを実現するシェアサテライトオフィス「Trist(トリスト)」の立ち上げについてお伝えした。

流山市のような郊外でテレワークが求められている背景には、「子育てに人気の街」ゆえの悩みがある。尾崎さんによると、子育て世代が多く流入する地域は子育て関連サービスのニーズがあまりにも多く、働きやすさや子育てのしやすさを向上させるためのサービスの供給が追いついていない。そのため通勤時間の長い郊外ほど、仕事と家庭の両立は難しいという。
テレワークを始めると父親・母親たちの生活はどう変わるのか? トリスト利用者の出(いで)梓さんと梁瀬(やなせ)順子さんに話を聞いた。

子どもが増えても有給は増えない。3人目の出産で迎えた限界写真左から、出梓さん、尾崎えり子さん、梁瀬順子さん(撮影/片山貴博)

写真左から、出梓さん、尾崎えり子さん、梁瀬順子さん(撮影/片山貴博)

現在3人の子どもを育てながらトリストでテレワークをする梁瀬さんは10年前、結婚を機に子育て環境を求めて流山市に引越してきた。

当時は時短勤務で埼玉県の企業に通勤していたが、子どもの体調不良で何度も保育園から呼び出された。さらに学校の行事や面談の数は子どもの数に応じて増えるのに、有給の日数は変わらない。「子どもが2人の時点でいっぱいいっぱいだったので、これは無理だと思い、3人目を産む前に思いきって退職しました」

それからは専業主婦としての生活を始めたが、子どもたちと一日中過ごす生活は想像以上にハードだった。「働いている方がイライラしないし、自分にとってバランスがいい」と気づき、地元でアルバイトを探し始めた。ところがどんなにやる気をアピールしても、土日のシフトに入れないことを理由に一向に採用されない。梁瀬さんは「一度正社員を捨てると、アルバイトですら働くことは難しいんだと思い知らされました」と当時を振り返る。

トリストのエントランス(写真/片山貴博)

トリストのエントランス(写真/片山貴博)

トリストのエントランスとミーティングスペース(写真/片山貴博)

トリストのエントランスとミーティングスペース(写真/片山貴博)

そんななか、子どもの保育園が一緒だった尾崎さんに悩みを相談してみたところ、運よく尾崎さんの仕事をトリストで手伝わせてもらうことに。3人目の子どもが保育園に入ってからは都内のベンチャー企業にテレワーク前提で採用され、現在はバックオフィス業務を担う週3日勤務の正社員としてトリストで働いている。

テレワークを始めてから「生活の自由度が増した」と語る梁瀬さん。「以前は何か用事が一つあると、有給を半日から1日は取らないといけませんでした。でも今は地元で働いているので、3人分の行事も習い事も面談も働きながら全て対応できます。通勤時間がない分、時間を効率的に使えている実感があります」

有給を消化しなくとも、子どもたちとの時間を大切にできるし、自分の時間も確保できる。テレワークがなければ決して実現しなかった生活について、梁瀬さんは朗らかな表情で語ってくれた。

「一度辞めると、同じポジションに戻るのは難しい」トリストでテレワークをする様子(写真/片山貴博)

トリストでテレワークをする様子(写真/片山貴博)

2人目は、アパレルや雑貨メーカー向けの刺繍を企画製造する会社で働いてきた出(いで)さん。専門的な仕事に就きながら、保育園児と0歳児の2人の子どもを育てている。もともとは都内で暮らしていたが、子育て環境を求めて3年前に流山市に移り住んできた。

「アパレルの仕事は忙しくて時間が不規則ですし、トレンドの変化が激しいので、『一度辞めると、同じポジションで復職するのは難しい』と言われています。実際に私の会社で育休復帰した人は一人もいなかったのですが、仕事が大好きだったので、出産してもなんとか続けたかったんです」

流山から職場まで、通勤途中での保育園への送り迎えを含めると往復3時間。時短勤務にするだけでも、迷惑をかけているという負い目を感じてしまうはずなのに、子どもが熱を出して保育園に呼び出されるようなことが続けば、きっと仕事が手につかなくなる。そんな不安から、出さんは「私は会社に必要ないのだろか?」とまで考えたという。

出さんは第一子の出産後、たまたま手に取ったフリーペーパーでトリストの存在を知り、すぐに尾崎さんに連絡をとった。アパレル業界でのテレワークは非常にレアケースであるため、利用したいが会社を説得できる自信がないと相談すると、尾崎さんは出さんと一緒に会社に出向き、社長を説得してくれた。トリストでのテレワークが認められたおかげで、出さんは会社史上初の育休復帰を果たし、仕事を続けることができた。

「家と保育園とトリストがとても近いので、保育園からの急な呼び出しにも対応できますし、病後児保育を利用したり家で看病したりしながら仕事を再開できます。有給がなくなる不安もありません。通勤時間がない分、時間を有効活用できています。もしテレワークができていなかったら、仕事を諦めていたかもしれません」

出さんがデザイン・制作したトリストのワッペン(写真/片山貴博)

出さんがデザイン・制作したトリストのワッペン(写真/片山貴博)

仕事を続けるために必要なのは「地域コミュニティ」

梁瀬さんや出さんのように、「地元でやりがいのある仕事をしながら、家族との時間も大切にしたい」と願う人たちが1つのワークスペースに集うことで、仕事と家庭だけではない第3の場所として“地域コミュニティ”を同時に築くことができる。

「子どもを迎えに行けないときは、トリストのメンバーにお迎えを頼むことができるのでとても助かっています。困ったときにお互いに助け合えますし、地域の生の情報を得られるのもありがたいです。予防接種の受付が始まったとか、いいお店があるとか」と梁瀬さんは語る。

トリスト発起人の尾崎さんによると、「流山市は子育てを目的に引越してくる人が多いので、もともと地域には縁もゆかりもない人が多い」。香川県出身の尾崎さんもその一人だ。

尾崎さんは最初、「会社の理解があり、家族で家事分担ができていれば、仕事と育児の両立は容易」と思っていた。しかし現実はそうではなかった。「都内の企業に通勤していたのですが、子どもが熱を出して保育園からはしょっちゅう呼び出されますし、私が体調を崩して家族に頼れないときは、ご飯を買いに行くことすらできませんでした」

「このままでは仕事を続けられない」。そう思った尾崎さんは、香川県の実家から季節ごとに送ってもらったうどんやみかんを、近所のおじいちゃんおばあちゃんたちにおすそ分けした。何かあったら助けてもらえるよう、日常からコミュニケーションをとるようにしたのだ。その甲斐あって、地域のシニアは困ったときに子どもを預かってくれるなど、尾崎さんがヘルプを出した際に快く手を貸してくれるようになった。

その一方で、尾崎さんは地域のシニアのためにお米などの買い物を進んで引き受けている。「時間のあるシニアとパワーのある子育て層が互いにないものを補い合うことで、地域がうまく連携できる」と尾崎さん。「郊外で暮らす子育て世代が仕事を継続できるかどうかは、地域ネットワークがあるかどうかにかかっています」

しかし都内に働きに出ていると、忙しい子育て世代は地域と関わる時間を持つことは難しい。お金で買えない地域コミュニティは、時間をかけて構築することが必要だ。「働きながら地域コミュニティと繋がれて、家族との時間も大切にできる、この3つを同時進行できる場所」の必要性を認識した尾崎さんは、トリストを通じて地域との関わりが生まれるよう、さまざまな工夫をしている。

トリスト利用者の子どもたち向けにプログラミング講座を開いたり、高校生にカフェを運営してもらったり。トリストの近くに住むシニアには防犯見守りや託児の協力も得ている。

トリスト利用者の子どもたち向けにプログラミング講座を開いたときの様子(写真提供/梁瀬さん)

トリスト利用者の子どもたち向けにプログラミング講座を開いたときの様子(写真提供/梁瀬さん)

トリストのお掃除や託児をしてくださっている女性(写真提供/トリスト)

トリストのお掃除や託児をしてくださっている女性(写真提供/トリスト)

今では次のような助け合いが自然とできる関係が生まれているという。

「ある日トリストで働くお母さんが乗って帰って来るはずだった飛行機が遅延して、3人の子どもたちを保育園に迎えに行けなくなってしまいました。そのとき、SNSの入居者グループでそのお母さんがヘルプを出した瞬間、トリストのお母さんたちが役割分担をして動き始めたんです。あるお母さんは子どもたちをそれぞれの保育園に迎えに行き、あるお母さんはご飯を用意して子どもたちを受け入れました。当然金銭のやり取りは発生していません。普段時間をかけて人間関係を築いているからこそ、いざというときにチームプレーが生まれるんです」

父親・母親の働き方が変われば、子どものキャリア観も変わる

トリストは父親・母親の働き方を変えるだけでなく、子どものキャリア観を育むことも目指していると尾崎さんは語る。

「子どもたちがいかに地域において広いキャリア観を持てるかが、これからの日本に求められています。そのためにはどの親の子どもであれ、いろんなネットワークや仕事を地域の中で知る機会が必要です」

トリストでは、入居者のキャリアを活かした子ども向けのワークショップを開催している。アパレル業界で働く出さんは、子どもたちにミシンの使い方を教え、アニメキャラクターの衣装をみんなでつくったところ大評判だったそうだ。

出さんにミシンの使い方を習う子どもたち(写真提供/トリスト)

出さんにミシンの使い方を習う子どもたち(写真提供/トリスト)

自分でつくった衣装を着てポーズを決める子どもたち(写真提供/トリスト)

自分でつくった衣装を着てポーズを決める子どもたち(写真提供/トリスト)

こうしたスキル面だけでなく、「好きなことをして働く背中を子どもたちに見せることが、子どもたちにとって一番のキャリア教育になる」と尾崎さんは話す。

「どんなに学校がキャリア教育を施しても、結局子どもたちのキャリア観は親がつくるものです。父親・母親が自分の未来を信じて、自分自身が楽しむ姿を子どもに見せてほしい。お父さん、お母さんたちの働き方を変えることが、遠回りに見えて、実は子どもたちのキャリア観を一番広くしてあげられることなんです」

テレワーク人口が増えれば、日本は面白くなる

「テレワークがなければ仕事を辞めていたかもしれない」という言葉を聞くたびに、今までどれほど多くの母親たちが地元でキャリアを活かして働くことを諦めてきたのかと思う。父親・母親は子どものために仕事を諦めるのではなく、子どものためにこそ仕事を続けてほしい。そのためには、テレワークなどの働き方の支援や、地域との助け合いが必要だ。父親・母親のためだけでなく日本のために、この動きが全国に広がっていくことが望まれる。

関連記事:テレワーク導入に900社が理解示さず。流山市の民間シェアオフィスが挑む高い壁

●取材協力
Trist(トリスト)元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/170117_main.jpg

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「秋葉原駅」から電車で30分以内、家賃相場安い駅ランキング! 2020年版

日本が誇るサブカルチャーの代名詞ともいえる街、秋葉原。古くからの電気街であるとともに、海外からの訪日客を引き付ける観光都市であり、東京のIT拠点として高層ビルが林立するオフィス街でもある。趣味でもビジネスでもたくさんの人が訪れる秋葉原へのアクセスが良い場所に住むとしたら、どこが狙い目だろうか。シングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)を対象に、最新の家賃相場が安い駅ランキングから探ってみたい。秋葉原駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP11駅
順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地/秋葉原町までの所要時間(乗り換え時間・駅から駅への徒歩移動時間を含む)/乗り換え回数)
1位 新田(埼玉) 5.50万円(東武伊勢崎線/埼玉県草加市/30分/2回)
2位 流山セントラルパーク 5.63万円(つくばエクスプレス/千葉県流山市/28分/0回)
3位 葛西臨海公園 5.70万円(JR京葉線/江戸川区/24分/1回)
4位 北松戸 5.80万円(JR常磐線/千葉県松戸市/28分/2回)
5位 上本郷 5.90万円(新京成線/千葉県松戸市/30分/2回)
5位 獨協大学前 5.90万円(東武伊勢崎線/埼玉県草加市/28分/2回)
7位 一之江 6.00万円(都営地下鉄新宿線/江戸川区/28分/1回)
7位 南流山 6.00万円(JR武蔵野線・つくばエクスプレス/千葉県流山市/25分/0回)
9位 草加 6.10万円(東武伊勢崎線/埼玉県草加市/25分/1回)
9位 谷塚 6.10万円(東武伊勢崎線/埼玉県草加市/26分/2回)
11位 京成金町 6.20万円(京成金町線/葛飾区/29分/2回)

ビジネス街にも繁華街にもアクセス性抜群、東武伊勢崎線に注目

ランキング中で目立つのは、東武伊勢崎線の沿線駅の多さ。それぞれ押上駅を起点とする「東武スカイツリーライン」の愛称で呼ばれる区間に含まれており、同駅からは東京メトロ半蔵門線や都営浅草線、浅草駅では東京メトロ銀座線などと連絡しているため、大手町や永田町といったビジネス街や、渋谷や表参道などの繁華街と、多方面に交通の便が良い路線だ。

1位の新田駅も、その東武伊勢崎線の沿線駅。周辺は、緑が豊かな住宅街だ。大きな商業施設などはないが、その分のんびりして落ち着いた環境。東京外環自動車道の草加インターチェンジが近いため、休日に子どもを連れて車で遠出をしたい家庭には便利な立地だろう。

ランクインしている東武伊勢崎線沿線の駅は、新田を含め普通列車のみの停車駅が大半だが、同率9位の草加駅だけは、急行、区間急行、準急、区間準急のすべてが停車する。駅前は駅ビル「ヴァリエ」のほか、マルイやイトーヨーカドーなどの大きな大型商業施設があり、生活に必要なものは不自由することがなさそう。少し行けば24時間営業のスーパーもあり、帰宅が深夜になってしまうような忙しいビジネスパーソンにも心強いだろう。

開発進むつくばエクスプレス沿線は、子育て環境も二重丸流山セントラルパーク駅(写真/PIXTA)

流山セントラルパーク駅(写真/PIXTA)

2位の流山セントラルパーク(つくばエクスプレス)は普通列車のみの停車駅だが、秋葉原まで乗換なしで行くことができる。つくばエクスプレスは2005年に開業した関東で最も新しい主要路線であるだけに、地域は開発が進んでいる最中。豊かな自然や歴史を感じさせる町家や史跡がわずかに残りながらも、駅前はホームセンターやスーパーがあり、新興住宅地らしい買い物の便利さも享受できるのは魅力的だ。

駅近くの市民総合体育館「キッコーマンアリーナ」も新しく建て替えられたばかりで、市民のスポーツ活動の拠点になっている。プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」の試合も開催されており、体を動かすことやスポーツ観戦が好きな人にとってより心をひかれそうだ。

7位の南流山駅は、流山セントラルパーク駅の隣駅。こちらは快速、通勤快速、区間快速も停車し、JRも利用できるため、交通の便でいえば南流山駅に軍配があがる。

東洋学園大学の流山キャンパスへのバスが乗り入れているため、駅から少し離れるがスターバックスなど学生が好むような飲食店なども点在している。流山セントラルパークと同じく開発が進んでおり、スーパーやホームセンターも増えているが、比較的おだやかでのんびりした住宅街という印象が強いかもしれない。

流山セントラルパーク駅と南流山駅のある流山市は、子育て支援の手厚い街としても知られている。乳幼児を乗せたベビーカーのままでも通行しやすいよう歩道が広く整備されていたり、駅前送迎保育ステーションを設置したりして待機児童問題の解消にも市を上げて取り組んでおり、仕事と育児の両立のサポートが行われている。子育て世帯にとっては選択肢に入れる価値はあるだろう。

埼玉、千葉、都内のどこからでもセレクト自在

ランキング中、対象物件が一番多かったのは、7位の一之江駅だ。ランキング中唯一の、都営地下鉄沿線駅。秋葉原だけでなく、東京や新宿などの主要街へも30分ほどでアクセスできる。駅近辺のスーパーは深夜まで営業しており、ドラッグストアなども多い。駅前からは成田国際空港や羽田空港への直通バスが出ており、残業や出張の多いビジネスパーソンには利点といえそう。

一之江境川親水公園(写真/PIXTA)

一之江境川親水公園(写真/PIXTA)

駅から少し行くと、おしゃれな外観の飲食店や、昔から地元で営業してきたのであろうノスタルジックな雰囲気あふれるスイーツ屋などもある。また、一之江境川の川沿いは桜並木が植えられた遊歩道の公園になっており、小さな子どもを連れた散歩も楽しめそう。日々の暮らしを満喫したい人にとっては、地元散策の楽しい街はそれだけで大きな魅力だろう。

ランクインした駅はそれぞれ、埼玉、千葉、東京がバランスよく混在しているが、路線や自治体には集中が見て取れる。意外な掘り出し物の街や場所を見つけるのは部屋探しの楽しみだが、好きな街の雰囲気や条件で選ぶのもいいもの。そんな街のもつ傾向を見逃さすしっかり見抜くのも、満足のいく部屋探しには欠かせないものなのだろう。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている秋葉原駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2019/5~2019/7
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換時間を含む)。記事中に表記している所要時間は、調査時において朝の通勤時間帯(7:30~8:30)で到達できる一番早い所要時間を表記している。
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している。また、乗り換えが発生する駅については乗り換え時間を含んで表記している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/170163_main.jpg

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縫製工場をリノベした自宅兼アトリエは、アートを楽しむ人たちで本日も大にぎわい

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縫製工場をリノベした自宅兼アトリエは、アートを楽しむ人たちで本日も大賑わい

山形県西村山郡河北町。その街中に建つ1軒の建物は、外から見ると一戸建てだが、実は縫製工場をアトリエ付き住宅にリノベーションしたもの。1階部分のアトリエは、オーナーである佐藤潤さん(51歳)が自身の創作活動や、陶芸教室、切り絵教室などに使っている。“空き家”ならぬ“空き工場”が地域のコミュニティスペースとしてにぎわいを見せるまでを佐藤さんに聞いた。
縫製工場だった築28年の空き家のリノベーションを決断

佐藤さん夫妻が家を探し始めたのは2017年の秋ごろ。陶芸作品をつくる“焼きもの屋”の佐藤さんが、福島県から山形県に移住するために家を新築するつもりで土地を探していたところ、株式会社結設計工房(一級建築士事務所)の完成内覧会のチラシを偶然目にすることに。その雰囲気がすっかり気に入り、足を運んだ内覧会で見学した一戸建てに “こだわり”を感じた佐藤さんは、結設計工房に設計を依頼することにした。

それから、土地探しに本格的に取り組んだ佐藤さん夫妻。ところが、希望の広さや立地条件を満たそうとすると、どうしても予算内に収まらない。そんな中、結設計工房の代表である結城利彦さんから、「中古物件を購入し、リノベーションしてみては?」との提案があり、引き渡し済みの実際にリノベーションした中古戸建てを見学しに行った。

「『あれ? いいじゃない?』というのが第一印象でした。土地はたくさん見学しましたが、最終的には、築28年の中古の建物をリノベーションすることに決めました」(佐藤さん)

「一戸建て」ではなく、「建物」としたのには理由がある。それは、この建物が、住宅ではなく、ニット製品を製造する縫製工場だったから。倒産による廃業で競売にかけられた結果、不動産会社が所有。10年ほど前から”空き家”ならぬ”空き工場”となっていたのだ。

「鉄骨造なので1階部分に柱がほとんどなかったことが決め手に。『ここだったら広いアトリエがつくれるぞ!』と決断しました」(佐藤さん)

リノベーションする前(上)と、リノベーション後(下)。凍結融解により剥落していた外壁を、金属系のサイディングに変更。メルヘンチックな外観を、「和」を意識したつや消しの黒を基調とするデザインにすることで、陶芸のイメージに近づけた(写真提供/結設計工房)

リノベーションする前(上)と、リノベーション後(下)。凍結融解により剥落していた外壁を、金属系のサイディングに変更。メルヘンチックな外観を、「和」を意識したつや消しの黒を基調とするデザインにすることで、陶芸のイメージに近づけた(写真提供/結設計工房)

リノベーション前(上)とリノベーション後(下)の1階部分。鉄骨造のため、柱がなく広々とした空間を確保。天井も一般の住宅より高く、その分、さらに開放感のあるアトリエとなった(写真提供/結設計工房)

リノベーション前(上)とリノベーション後(下)の1階部分。鉄骨造のため、柱がなく広々とした空間を確保。天井も一般の住宅より高く、その分、さらに開放感のあるアトリエとなった(写真提供/結設計工房)

リノベーション後の階段部分。「元工場だった名残で、廊下が広く、階段が緩やかなのがうれしい」(佐藤さん)(写真提供/結設計工房)

リノベーション後の階段部分。「元工場だった名残で、廊下が広く、階段が緩やかなのがうれしい」(佐藤さん)(写真提供/結設計工房)

工場時代の照明や自然素材を使い、コストを抑えながら雰囲気のある空間に

リノベーションは、「使い込むほどに風合いを増すように、自然素材をなるべく多く使う」という方針のもとに行った。また、コストを抑えるために、建物の形やサッシの位置などはできるだけ変更せず、1階のアトリエ部分でも、工場で使っていた照明器具や天井の電源をそのまま活かす形で残した。

一方、アトリエを陶芸教室としても使う予定だったので、通りを歩く人に認知してもらえるように、「和」を意識したスタイリッシュな外観に一新。中の様子が少し見えるようにと、スリットのある格子戸を採用した。また、施主である佐藤さん夫妻の意見を反映しながら進められるよう、大工は1人のみ。対話を通して細部を詰めつつ、約半年間かけて、じっくりと建てた。

加えて、1階をアトリエと作業スペース、来客用の和室といったパブリックスペースとし、2階をリビングや寝室などのプライベートゾーンとして分離。2階のリビングは、通りを行き交う人の目を気にせずに、ゆっくりリラックスできるくつろぎの空間となった。

佐藤さん自身の作品も飾っているリビング。窓はLow-Eペアガラスに交換、床は無垢フローリングを採用し、あたたかみのある空間に仕上げた(撮影/筒井岳彦)

佐藤さん自身の作品も飾っているリビング。窓はLow-Eペアガラスに交換、床は無垢フローリングを採用し、あたたかみのある空間に仕上げた(撮影/筒井岳彦)

2階のパウダールーム。塗り壁や大工と建具職人がつくった特注の家具や建具など、自然素材の内装材の効果で、あたたかい雰囲気の明るい空間となっている(撮影/筒井岳彦)

2階のパウダールーム。塗り壁や大工と建具職人がつくった特注の家具や建具など、自然素材の内装材の効果で、あたたかい雰囲気の明るい空間となっている(撮影/筒井岳彦)

1階玄関から奥につながる廊下にピクチャーレールを設け、自分の作品をギャラリー風に展示(撮影/筒井岳彦)

1階玄関から奥につながる廊下にピクチャーレールを設け、自分の作品をギャラリー風に展示(撮影/筒井岳彦)

小学生から92歳まで。陶芸・切り絵の教室が地域の人が集まる憩いの場に

建物が完成したときには、内覧会を開催。地域の人に陶芸を体験してもらうイベントも行った。近所に住む内藤さんも、結設計工房に家を設計してもらった縁で、この内覧会を訪れて陶芸を体験。その後、この教室に通うことになった。

「子どもの絵画教室を探していたところ、ここで図画工作を教えてもらえることになって。子どもに習わせるつもりだったのですが、付き添っていたら、母親である私まで楽しくなって通うことになりました。絵画だけでなく、切り絵や迷路づくり、陶芸なども習っていて、干支の置物や、8連発の割り箸鉄砲などのおもちゃもつくるんですよ。佐藤さんは、子どもが興味を持ったものを察知して、『じゃ、これやってみようか』とトライさせるやり方。子どもの可能性を引き出す教え方に感謝しています」(内藤さん)

結設計工房の代表夫妻も、教室がオープンした当初から通い始めた生徒のうちの一人。1年半が経ち、今ではダンボール1箱もの作品がある。

「好きなようにやらせてくれる上に、好きなようにやったことを褒めて伸ばしてくれるんです。だから続けられるのかも。月2回のペースで通って、毎回3~4時間はここで作品をつくっています」(結城可奈子さん)

生徒の中には、20時に来て夜中の2時まで教室にいる人も。中には92歳という高齢の人もいて、子どもからお年寄りまで、実にバラエティ豊かな年齢層の人たちがここに集まっていることになる。そして、陶芸や切り絵、図画工作など、思い思いの創作に取り組んでいるのだ。

こうしたアットホームな居心地の良さには、教室のつくりも一役買っている。通りに面した部分に格子戸を採用したことが内外の絶妙な距離感を保っている上、洗練され過ぎないようにラフな感じを残した仕上げにしたことで、気を使わずに利用できる親しみのある空間になったからだ。居心地の良いアトリエだからこそ、生徒の滞在時間が長くなり、自然に世代を超えた生徒同士のコミュニケーションも生まれた。

「陶芸はコミュニケーションの手段の一つであり、こちらが押し付けるのはおかしいと思っています。むしろ、相手の願いや思いを叶えてあげるのが、コミュニケーションの本来のあり方。だからこの教室では、受講時間やテーマは特に決めずに、その都度、相手に応じたテーマを考えるんです」(佐藤さん)

陶芸に使う窯は、火をたくタイプのものだと、近隣の目が気になるが、電気窯やガス窯であれば、街中でも問題なく使える。通りに面した今の場所なら、さらに気兼ねなく陶芸ができるし、人も集まってきやすい。そういう意味でも、ここに教室を開いて良かったのだと佐藤さんはいう。

「この場にいろいろな人たちが集まってくれることで、自分の制作時間は減ってしまいますが、それでも人とのかかわりができたことは、自分の人生にとってはとても良いこと。土地を探しはじめた当初は、人里離れた地に窯を構えることを考えていたのですが、街の中のアトリエにして正解でした」(佐藤さん)

題材であるりんごを前に、絵手紙を制作。教室では、子どもも大人も一緒に制作に取り組む(撮影/筒井岳彦)

題材であるりんごを前に、絵手紙を制作。教室では、子どもも大人も一緒に制作に取り組む(撮影/筒井岳彦)

ろくろに向かうと、ついつい熱中して時間が経つのを忘れるという結城可奈子さん。制作に集中できる環境も手伝い、いつも3~4時間は教室に滞在する(撮影/筒井岳彦)

ろくろに向かうと、ついつい熱中して時間が経つのを忘れるという結城可奈子さん。制作に集中できる環境も手伝い、いつも3~4時間は教室に滞在する(撮影/筒井岳彦)

奥にあるのが窯。手前の棚には、成形された作品が、窯で焼かれるのを待っている(撮影/筒井岳彦)

奥にあるのが窯。手前の棚には、成形された作品が、窯で焼かれるのを待っている(撮影/筒井岳彦)

原則として、自身の制作(陶芸と切り絵)は、毎日行う佐藤さん。その合間に、陶芸教室や切り絵の個人レッスン、子ども向けの図画工作教室を開いている(撮影/筒井岳彦)

原則として、自身の制作(陶芸と切り絵)は、毎日行う佐藤さん。その合間に、陶芸教室や切り絵の個人レッスン、子ども向けの図画工作教室を開いている(撮影/筒井岳彦)

右のドアがプライベートゾーン用の玄関。左が、アトリエの玄関と、入口を分けている(写真提供/結設計工房)

右のドアがプライベートゾーン用の玄関。左が、アトリエの玄関と、入口を分けている(写真提供/結設計工房)

縫製工場がアトリエ付き住宅として再生され、地域の人々が集うコミュニケーションの場となったこの建物は、第36回住まいのリフォームコンクール<コンバージョン部門>で「公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞」に輝いた。「スーパーの横の黒い建物」として認知され、地域の若者が仲間を連れてぐい呑をつくりに来たりするというこのアトリエ。老後は、アトリエ部分をリビング・ダイニングに改装して、1階部分だけで暮らせるようにすることも考えているというから、今後もゆるやかに形と機能を変容させていく可能性を残しているということになる。まさにこの時代の「コンバージョン」のあり方を示す好例なのではないだろうか。

●参考
アトリエたる
株式会社結設計工房元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170224_main.jpg

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2019年の首都圏の一戸建て市場動向、平均価格が公表結果によって違うのはなぜ?

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2019年の首都圏の一戸建て市場動向、平均価格が公表結果によって異なるのはなぜ?

2020年に入って、2019年の住宅市場の動向が相次いで公表された。そこで今回は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)と不動産経済研究所が公表した、首都圏の一戸建て市場の動向について見ていくことにしよう。ポイントは、平均価格に開きがあることだ。【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
「首都圏の建売住宅市場動向―2019年のまとめ―」を公表/(株)不動産経済研究所東日本レインズでは首都圏平均成約価格3510万円

レインズ(REINS)とは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構(通称東日本レインズ)だ。不動産を仲介する事業者は、このネットワークを活用して物件の売買を仲介している。

東日本レインズが公表しているのは、2019年の首都圏の中古マンション、中古一戸建て、新築一戸建て、土地の動向だ。この中で、新築一戸建ての動向を取り上げていきたい。

首都圏の新築一戸建てについては、成約件数が前年比11.5%増の5872件。成約価格が首都圏平均3510万円(前年比1.2%上昇)で前年を上回った。地域別に詳しく見ていくと、下表のようになる。

新築一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」より転載)

新築一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」より転載)

平均価格が最も高いのは、東京都区部で5082万円(平均土地面積:80.34平米、平均建物面積:94.07平米)、次いで横浜市・川崎市の4147万円(平均土地面積:112.75平米、平均建物面積:101.27平米)だ。
一方、土地の平均面積が広いのは、千葉県で平均土地面積:146.10平米、平均建物面積:101.78平米(平均価格:2856万円)、次が埼玉県で平均土地面積:133.17平米、平均建物面積:100.95平米(平均価格:2974万円)となっている。

ちなみに、中古一戸建てを見ると、成約価格は首都圏平均で3115万円(平均土地面積:146.82平米、平均建物面積:104.96平米)と新築一戸建てよりもお手ごろな価格になる。ただし、東京都区部では中古一戸建ての成約平均価格のほうが新築より高くなり、5532万円と逆転する。

その理由は、新築では土地・建物面積が狭くなるからだ。古い建物が建っていた広い土地を2つに分けて2棟の新築一戸建てとして売る、などとしたほうが利益は大きいため、どの地域でも新築のほうが面積は狭くなる。地価の高い東京都区部では、平均価格で新築と中古が逆転するという現象が起きるといったわけだ。

不動産経済研究所では首都圏平均発売価格5130万円

次に、不動産経済研究所が公表した「首都圏の建売住宅市場動向(2019年のまとめ)」を見ていこう。

首都圏の新築建売一戸建てについては、新規発売戸数が前年比5.8%減の4473戸。発売戸数の1戸当たりの平均価格は5130.2万円(前年比0.7ダウン%)で前年を下回った。

都県別に詳しく見ていこう。
○首都圏の新築建売一戸建て(建売住宅)の都県別の概要
平均価格平均敷地面積平均建物面積
・東京都6797.7万円116.82平米96.75平米
・千葉県3826.0万円137.32平米100.59平米
・埼玉県4084.2万円115.36平米97.37平米
・神奈川県5715.3万円126.59平米100.56平米
・首都圏5130.2万円123.95平米98.61平米

さてここで、先ほどの東日本レインズのデータを思い出してほしい。首都圏平均の土地・建物の面積はさほど違いがないのに、平均成約価格は3510万円だった。不動産経済研究所の発売平均価格と比べると1620万円ほどの開きがある。どういうことだろう?

違いは一戸建ての売主、売り方の違いにある!

理由はいろいろある。
東日本レインズは成約価格であり、レインズのネットワークシステムに登録する成約事例が漏れている場合もある。一方、不動産経済研究所は発売平均価格だ。確かにこうした違いはあるが、最も大きな違いは売主や売り方の違いだ。

まず、不動産経済研究所で見ると、調査対象は「分譲物件」で「原則として10戸以上の物件」になる。つまり、デベロッパーや大手のハウスメーカーなどが、10戸以上の分譲住宅地を形成して建てた一戸建てを、直接販売しているものになる。いわゆる大型のニュータウンや都市部のミニタウンなどを、イメージするとよいだろう。

これらは街区としてプランニングするので、一戸建ての外観や植栽を統一して街並みを整えたり、安全に配慮した道路を配置するなどの特徴がある。ゆとりある敷地に仕様の高い建物を建てることもあって、価格も高くなる傾向がある。

ところが、実際に街なかで目にするのは、数戸規模の新築一戸建て現場だろう。2~3戸の場合もあれば、もう少し規模の大きい場合もあるだろう。こうした新築一戸建ては、建てた売主が直接チラシや自社のサイトなどを使って販売する場合もあれば、仲介会社に委託して販売してもらう場合もある。

東日本レインズのデータは、新築一戸建ての中でもレインズのネットワークを活用して買い主を探したいという物件が対象になる。多くの場合は、その地域限定で分譲している小規模な事業者や建築が中心の施工事業者などが売主となる物件と考えられる。

これら数戸単位で販売される一戸建ては、既成の街なかにあるので利便性などが期待できる一方、狭い敷地に建てられることでゆとりあるプランを採用しづらい傾向がある。建物も一般的な仕様のものが多く、価格は比較的リーズナブルなものになる。

このように、新築一戸建ての売り主は多様で、売り方もさまざまなため、全体の実態がつかみづらいという点に留意が必要だ。加えて、一戸建ての工法やプラン、設備仕様などにも違いがあるため、新築一戸建てを探す場合は、データだけでなく、実際に現地を見てその特徴をつかむことが大切だ。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170218_main.jpg

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築100年超の蔵付き古民家を鎌倉に移築再生、妥協無しで理想を追求したこだわりの家

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築100年超の蔵付き古民家を鎌倉に移築再生、妥協無しで理想を追求したこだわりの家

鎌倉の静かな住宅街に、岡山の蔵付き古民家を移築再生した小泉さんの住まい。2019年2月に行われた完成披露のオープンハウスには、明治時代の蔵と平屋を組み合わせたその存在感ある建物を一目見ようと、一日で130名を超える見学者が訪れた。『渡辺篤史の建もの探訪』取材時に渡辺さんをも「感動しました」と唸らせた、妥協無しの本物ならではのこだわりがつまった小泉邸をご紹介しよう。
岡山の呉服屋だったお屋敷の明治時代の蔵と平屋が、鎌倉で蘇る

この移築古民家の施主である小泉成紘さんが、鎌倉・逗子・葉山のエリア限定で、趣のある日本家屋を探し始めたのは今から6~7年前。しかし多くの中古物件を見学したものの、立地と建物、どちらも気に入るものはなく、住まい探しは難航した。どちらも譲れない小泉さんが最終的に選択したのは、理想の土地を新規で購入し、そこに別の場所で空き家となった古民家を移築するという古民家移築再生だった。

選んだ土地は、鎌倉駅にも近くて山を背負った谷戸の趣も残る静かな住宅地。建物は日本民家再生協会(JMRA)を通じて出会った、かつて呉服屋だった岡山県のお屋敷の明治生まれの平屋と蔵。縁側にガラス戸が綺麗に並んだ古民家の写真に惹かれ現地を見学、実際に築100年を超す建物の本物ならではの風格や味わいに惹かれ、この建物を忠実に鎌倉で再現したいと思ったという。

離れの座敷として使用されていた平屋と、2階建ての土蔵。敷地の関係で西隣にあった母屋を除き、職人の手仕事で丁寧に解体されたあと移送し、そのまま鎌倉で蘇った(写真撮影/高木 真)

離れの座敷として使用されていた平屋と、2階建ての土蔵。敷地の関係で西隣にあった母屋を除き、職人の手仕事で丁寧に解体されたあと移送し、そのまま鎌倉で蘇った(写真撮影/高木 真)

明治時代のお座敷は、時代と空間を越えて忠実に元の姿に蘇り、次世代へと引き継がれる

それでは、こだわりのつまった小泉邸を、写真を中心にご紹介していこう。平屋部分は明治時代に呉服屋の奥座敷として使われていた二間続きの和室と縁側からなる日本の伝統的木造建築の粋を集めたつくり。ここは忠実に元の姿に復元し、来客時やイベントなどに使うおもてなしスペースにすることに。「元々この建物に惹かれたので、建材や建具などの部材ひとつたりとも変えたくなくて。瓦など劣化していると判断されたものもありましたが、現代では手に入らないものは特注でつくってもらいました」というほどのこだわりよう。

その甲斐あって、元のオーナーが訪れた際「岡山の家にいるよう」と感嘆するほどに、忠実に復元・再生されて蘇っている。

一目惚れした縁側は、一本レールに波打つレトロなガラスの木製建具11枚が並ぶ繊細なつくりをそのままに再現。庭の脇には薪ストーブ用の薪を収納する薪小屋を新設。薪小屋の屋根は今では希少な天然スレート瓦。「薪小屋には贅沢なようですが、室内からも外からも目につく場所なので」と小泉さん(写真撮影/高木 真)

一目惚れした縁側は、一本レールに波打つレトロなガラスの木製建具11枚が並ぶ繊細なつくりをそのままに再現。庭の脇には薪ストーブ用の薪を収納する薪小屋を新設。薪小屋の屋根は今では希少な天然スレート瓦。「薪小屋には贅沢なようですが、室内からも外からも目につく場所なので」と小泉さん(写真撮影/高木 真)

呉服屋の奥座敷として使われていた離れのニ間続きの和室。できるだけ忠実に元の空間を再現することにこだわり、間取りや建具などの部材がそのまま。さらに、元の古民家から円卓や箪笥などの家具も譲ってもらったため、まさに岡山の家そのものの空間が出来上がった(写真撮影/高木 真)

呉服屋の奥座敷として使われていた離れのニ間続きの和室。できるだけ忠実に元の空間を再現することにこだわり、間取りや建具などの部材がそのまま。さらに、元の古民家から円卓や箪笥などの家具も譲ってもらったため、まさに岡山の家そのものの空間が出来上がった(写真撮影/高木 真)

明治時代につくられたとは思えない、斬新なデザインの欄間(らんま)。職人さんの手仕事で丁寧に解体、壊れないよう岡山から鎌倉まで運ばれ、再び組み立てられ、時代と空間を越えて再生された(写真撮影/高木 真)

明治時代につくられたとは思えない、斬新なデザインの欄間(らんま)。職人さんの手仕事で丁寧に解体、壊れないよう岡山から鎌倉まで運ばれ、再び組み立てられ、時代と空間を越えて再生された(写真撮影/高木 真)

和室には珍しい洋風の重厚な上げ下げ窓が印象的で、当時はかなり斬新なデザインだったと推測される。二間続きの和室は、来客時やイベントの際のおもてなしスペースに(写真撮影/高木 真)

和室には珍しい洋風の重厚な上げ下げ窓が印象的で、当時はかなり斬新なデザインだったと推測される。二間続きの和室は、来客時やイベントの際のおもてなしスペースに(写真撮影/高木 真)

生活の場となる2階建ての蔵は、世界各国のアンティークを取り入れ和洋折衷のレトロ空間に

忠実に元の姿に復元された平屋に対して、2階建ての蔵は普段の生活スペースとして、建物の構造は活かしつつゼロベースで自由にプランニング。土蔵だった建物の構造は活かしつつ、趣味の空間や仕掛けがふんだんに組み込まれている。インテリアは元々好きだった世界各国のアンティークを取り入れて、和洋折衷なレトロ感あふれる個性的な仕上がりに。「イメージに合うアンティークものを一つひとつ自分でそろえて行きました。何でもできるので、かえって形にするのが大変で手間も時間もかかりましたね」と小泉さん。

蔵部分に設けられた玄関の扉は1920-30代イギリスのアンティーク。漆喰の白壁とのコントラストが美しい黒の外壁は焼き杉で、伝統を重んじつつ個性を演出(写真撮影/高木 真)

蔵部分に設けられた玄関の扉は1920-30代イギリスのアンティーク。漆喰の白壁とのコントラストが美しい黒の外壁は焼き杉で、伝統を重んじつつ個性を演出(写真撮影/高木 真)

玄関を入ると、1960年代ノルウエーの薪ストーブがある広い土間スペース。薪ストーブは土壁と相性の良い輻射熱式の全館暖房をと考え導入、2階の寝室まで吹抜けになっていて、生活空間である蔵スペース全体がこれひとつで温まる仕組みだ(写真撮影/高木 真)

玄関を入ると、1960年代ノルウエーの薪ストーブがある広い土間スペース。薪ストーブは土壁と相性の良い輻射熱式の全館暖房をと考え導入、2階の寝室まで吹抜けになっていて、生活空間である蔵スペース全体がこれひとつで温まる仕組みだ(写真撮影/高木 真)

蔵の1階は水まわりなどの生活スペース。イギリスやフランスの片田舎を思わせるキッチン、インテリアのポイントはブルーの勝手口ドア。これもフランスのアンティークで、実はこの家で一番高価だったという(約30万円)。キッチンはこのドアありきで設計が決まったそう(写真撮影/高木 真)

蔵の1階は水まわりなどの生活スペース。イギリスやフランスの片田舎を思わせるキッチン、インテリアのポイントはブルーの勝手口ドア。これもフランスのアンティークで、実はこの家で一番高価だったという(約30万円)。キッチンはこのドアありきで設計が決まったそう(写真撮影/高木 真)

造作キッチンの天板は群馬の養蚕農家の梁だった古材を加工したもの。「イギリス・ショーズ社のスロップ型シンクと水栓、ベルギーのスライス煉瓦、窓はアメリカのアンダーセンなど、パーツ一つひとつを厳選しました」と小泉さん(写真撮影/高木 真)

造作キッチンの天板は群馬の養蚕農家の梁だった古材を加工したもの。「イギリス・ショーズ社のスロップ型シンクと水栓、ベルギーのスライス煉瓦、窓はアメリカのアンダーセンなど、パーツ一つひとつを厳選しました」と小泉さん(写真撮影/高木 真)

玄関ホールからキッチンに通じる廊下も兼ねたスペースは、両側の防音仕様の扉を閉めると、ピアノ演奏のための防音室になる構造。壁紙はオランダのデザイナーもの、床タイルは市松模様にして機能性を追求する中にも遊び心が(写真撮影/高木 真)

玄関ホールからキッチンに通じる廊下も兼ねたスペースは、両側の防音仕様の扉を閉めると、ピアノ演奏のための防音室になる構造。壁紙はオランダのデザイナーもの、床タイルは市松模様にして機能性を追求する中にも遊び心が(写真撮影/高木 真)

なんともレトロな雰囲気のお風呂。椹(さわら)の浴槽に大正時代のアンティークのステンドグラス、壁はなんと漆喰塗り。水栓金具はテイストが合うものを求めて、フランスの現代ものエルボ社に(写真撮影/高木 真)

なんともレトロな雰囲気のお風呂。椹(さわら)の浴槽に大正時代のアンティークのステンドグラス、壁はなんと漆喰塗り。水栓金具はテイストが合うものを求めて、フランスの現代ものエルボ社に(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

トイレの床タイルも市松模様、便器はアメリカのコーラー社、手洗いにはフランスの陶器のガーデン用シンクを選んでレトロな雰囲気に。ポイントはアンティ-クのステンドグラスで、1920-30年代イギリスのロンデルガラス入り。トイレ側、玄関側、内外どちらから見ても美しい(写真撮影/高木 真)

トイレの床タイルも市松模様、便器はアメリカのコーラー社、手洗いにはフランスの陶器のガーデン用シンクを選んでレトロな雰囲気に。ポイントはアンティ-クのステンドグラスで、1920-30年代イギリスのロンデルガラス入り。トイレ側、玄関側、内外どちらから見ても美しい(写真撮影/高木 真)

2階へ階段で上がると、構造材を全てそのまま見せるデザインのダイナミックな寝室兼リビングの多目的空間。壁は土壁の中塗り仕上げ、中央は白い漆喰塗りにして、趣味の写真や映画、テレビもプロジェクター投影して大画面で見る仕掛け(写真撮影/高木 真)

2階へ階段で上がると、構造材を全てそのまま見せるデザインのダイナミックな寝室兼リビングの多目的空間。壁は土壁の中塗り仕上げ、中央は白い漆喰塗りにして、趣味の写真や映画、テレビもプロジェクター投影して大画面で見る仕掛け(写真撮影/高木 真)

白い漆喰壁の裏には、趣味のフイルム写真現像用の暗室スペースも(写真撮影/高木 真)

白い漆喰壁の裏には、趣味のフイルム写真現像用の暗室スペースも(写真撮影/高木 真)

勾配天井を活かした2階の大空間。築100年以上の木材がダイナミックに組み合わされた姿は眺めていて見飽きない。1階にある薪ストーブの配管が吹抜けになって、2階のこの大空間も温まる仕掛けだ(写真撮影/高木 真)

勾配天井を活かした2階の大空間。築100年以上の木材がダイナミックに組み合わされた姿は眺めていて見飽きない。1階にある薪ストーブの配管が吹抜けになって、2階のこの大空間も温まる仕掛けだ(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

インテリアのポイントとなる照明器具や時計などはもちろん、スイッチプレートやドアノブなどの小さな設備機器に至るまで、全て歴史ある古民家のテイストに合うものをと、小泉さん自らアンティークショップやインターネットなどで一つひとつ集めた。「真鍮のスイッチプレートを家一軒分の数そろえるのも結構大変でした」。この細部まで手抜きなしのこだわりが、本物の重厚感を生む(写真撮影/高木 真)

インテリアのポイントとなる照明器具や時計などはもちろん、スイッチプレートやドアノブなどの小さな設備機器に至るまで、全て歴史ある古民家のテイストに合うものをと、小泉さん自らアンティークショップやインターネットなどで一つひとつ集めた。「真鍮のスイッチプレートを家一軒分の数そろえるのも結構大変でした」。この細部まで手抜きなしのこだわりが、本物の重厚感を生む(写真撮影/高木 真)

緑豊かで静かな立地に、歴史が刻まれた古民家とそれにあう世界各国のインテリアを一つひとつ厳選して移築再生された小泉邸。その妥協無しの世界観は、実にお見事の一言。本物ならではの風格漂う古民家再生、実は古民家の部材などは基本無償だという。次回は、部材だけでなくその歴史ごと受け継ぐことができメリットの多い、「古民家移築」の仕組みや流れを中心に紹介しよう。

●取材協力
NPO法人 日本民家再生協会(JMRA)
O設計室元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170294_main_a.jpg

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【カップル&ファミリー編】山手線で中古マンションの価格相場が安い駅ランキング 2020年版

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【カップル&ファミリー編】山手線で中古マンションの価格相場が安い駅ランキング 2020年版

およそ50年ぶりとなる新駅「高輪ゲートウェイ駅」開業を、2020年3月14日に予定しているJR山手線。都内の主要部を環状に結んで走っており、東京のなかでも「JR山手線の沿線」に住んでいれば利便性は抜群だ。実際に住む場合、物件相場はどれくらいなのか。沿線の中古マンション価格相場を安い順にランキング。専有面積50平米以上80平米未満のカップル&ファミリー向け物件について紹介する。●山手線で中古マンション価格相場が安い駅ランキング【カップル・ファミリー編】
1位 鶯谷 4530万円(台東区)
2位 日暮里 4589.5万円(荒川区)
3位 西日暮里 4790万円(荒川区)
4位 田端 4980万円(北区)
5位 上野 5180万円(台東区)
5位 新大久保 5180万円(新宿区)
7位 御徒町 5280万円(台東区)
8位 池袋 5330万円(豊島区)
9位 巣鴨 5340万円(豊島区)
10位 大塚 5480万円(豊島区)
11位 神田 5530万円(千代田区)
12位 新宿 5780万円(新宿区)
12位 秋葉原 5780万円(千代田区)
14位 駒込 5980万円(豊島区)
15位 東京 6090万円(千代田区)
16位 高田馬場 6230万円(新宿区)
17位 代々木 6580万円(渋谷区)
18位 渋谷 6815万円(渋谷区)
19位 目黒 6880万円(品川区)
20位 原宿 6980万円(渋谷区)
21位 五反田 7090万円(品川区)
22位 目白 7480万円(豊島区)
23位 大崎 7485万円(品川区)
24位 浜松町 7680万円(港区)
25位 品川 7920万円(港区)
26位 恵比寿 7980万円(渋谷区)
26位 田町 7980万円(港区)
28位 新橋 8890万円(港区)
※有楽町駅は掲載条件に該当する物件が一定数に達していないため、ランキングから除外しております

物件の広さが変われば「価格相場が安い駅」も変わってくる?

JR山手線の全29駅のうち調査条件(SUUMO掲載物件数が11件以上)に合う28駅を、価格相場が安い順にランキングした結果が上記の通り。

前回は専有面積20平米以上50平米未満のシングル向け物件のランキングを紹介したが、今回1位の鶯谷駅と2位の日暮里駅は、前回も同じ順位だった。シングル編3位だった上野駅は今回5位に。鶯谷駅、日暮里駅、上野駅の街の特色については前回記事を参照してほしい。

上記のようにシングル編とランキング結果が大差ない駅があると聞くと「物件の広さが変わっても、JR山手線沿線で安く住める駅はあまり違いがないのか?」とも思えるが、そうとは限らない様子。ほかの順位はシングル編から結構入れ替わっていた。

3位・西日暮里駅はシングル編では11位、11位・神田駅はシングル編では20位だった。この結果を見ると、西日暮里や神田に住む場合、せっかくならシングル向け物件よりもカップル&ファミリー向け物件のほうがお得だとも考えられる。シングル向け物件と比べてカップル&ファミリー向けの物件の価格相場はどれほどアップするのかを見て、この考え方を検証してみたい。

西日暮里駅(写真/PIXTA)

西日暮里駅(写真/PIXTA)

前回と順位が変わらなかった1位・鶯谷駅はシングル向けの約1.45倍(シングル3130万円)、2位・日暮里駅はシングル向けの約1.41倍(シングル3265万円)がカップル&ファミリー向け物件の価格相場だった。一方で安さランキングが前回からジャンプアップした3位・西日暮里駅はシングル向けの約1.25倍(シングル3839.5万円)、11位・神田駅はシングル向けの約1.18倍(シングル4675万円)。シングル向けとカップル&ファミリー向けの価格相場の開きが小さいので、「大きくプラスせずにより広い物件に住めるなら、そのほうがお得感がある」という考え方も、あながち間違いではないだろう。

金額で見てみると、ほかの駅は軒並み「シングル向け物件の価格相場プラス1300万円以上」が「カップル&ファミリー向け物件の価格相場」だったのに対し、3位・西日暮里駅はプラス950.5万円、11位・神田駅はプラス855万円に抑えられていた。広くなっても価格相場の上昇が少ないと判明した、西日暮里駅と神田駅はどんな駅なのか。

3位・西日暮里駅は2位・日暮里駅に隣接し、両駅間はわずか500mほどしか離れていない。1971年の開業で現状はJR山手線で最も新しい駅でもあるが、高輪ゲートウェイ駅の誕生にともない、その座を譲り渡すことになる。東京メトロ千代田線と日暮里・舎人ライナーも通る駅周辺は、飲食店が多くにぎわっているが、少し離れると静かな住宅街が広がっている。

神田駅(写真/PIXTA)

神田駅(写真/PIXTA)

11位・神田駅はJR各線のほかに東京メトロ銀座線も利用可能。東京駅まで1駅という都心にある駅の周辺はオフィス街といった風情で、サラリーマン向けのリーズナブルな飲食店も多い。カップル&ファミリー向けの広さがあるSUUMO掲載物件数は、ランキング28駅中だと東京駅に次いで少なかった。しかし神田駅・東京駅周辺に勤め先があるなら通勤の負担がぐっと和らぐので、職住近接の生活を目指して物件探しにトライする価値はあるだろう。

さて、カップル&ファミリー向け物件の価格相場が、シングル向け物件から大きく跳ね上がる駅はどこだろう? それは、シングル編の12位から安さランキングを大きく下げた26位・恵比寿駅。カップル&ファミリー向け物件の価格相場はシングル向け物件(4230万円)の約1.89倍、金額差は3750万円! 「SUUMO住みたい街ランキング2019 関東版」でも2位に輝いた人気の街だけあり、強気……。シングル向け物件に住んで恵比寿の街を気に入ったとしても、カップル&ファミリー向け物件に住み替えるのはなかなかハードルが高そうだ。

恵比寿駅(写真/PIXTA)

恵比寿駅(写真/PIXTA)

JR山手線沿線で安く住みたい場合に有効な探し方とは

前回のシングル編ではランキング結果から「JR山手線の駅をJR中央線の北側か南側かで分けた際、北側にある駅のほうが価格相場は安い」という法則をお伝えした。この法則は、今回もおおむね当てはまっていた。沿線の中では価格相場が安い駅に分類できるランキングトップ14の駅は1駅をのぞいて北側に位置し、価格相場が高いほうに分類できる15位以下の駅では2駅をのぞいて南側に位置していたのだ。

価格を抑えつつJR山手線沿線で物件を探したい場合は、まず沿線のうち北半分にある駅をピックアップ。そのうえで職場へのアクセスのしやすさや、街の環境が自分好みかどうかなどを調べて、駅を絞り込んでいくのも一つの手と言えるだろう。さらに前述したように、シングル向け物件とカップル&ファミリー向け物件の価格差も考え合わせると、後悔のない物件選びに近づけそうだ。

●調査概要
【調査対象駅】山手線の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分圏内、築年数35年未満、物件価格相場1500万~1億円、専有面積50m2以上80m2未満、敷地権利は所有権のみ
【データ抽出期間】2019/5~2019/7
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/170076_main.jpg

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空き家になった岡山の元呉服店の奥座敷を鎌倉に。時代や空間を越えて繋がる古民家移築物語

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空き家になった岡山の元呉服店の奥座敷を鎌倉に。時代や空間を越えて繋がる古民家移築物語

移築した古民家の新オーナーは歴史が刻まれた家屋を譲り受け、元オーナーは愛着ある建物を壊すことなく引き継ぐ。「私たちは、まさにWin-Winの関係です」と口をそろえるのは、鎌倉に移築された岡山の元呉服店の蔵付き古民家の新旧オーナー。前回は、見事によみがえった古民家の建物やインテリアの詳細を紹介した。古民家移築再生は、時代や空間を越えて家が繋ぐご縁。今回はそんな蔵付き古民家を移築した鎌倉の小泉邸が完成するまでの過程や、工夫の数々をご紹介しよう。
立地、建物どちらかが気に入らず難航した家探しが、土地購入+古民家移築、で解決!

鎌倉に移築した古民家の施主である小泉成紘さんが住まい探しを始めたのは、いまから6~7年前の2012年ごろのこと。鎌倉の谷戸(丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形で鎌倉に多い)の雰囲気が好きで、そんな静かな場所にある趣ある家を求め、鎌倉から湘南エリアのさまざまな中古物件を見学した。しかし、いくら探しても立地と建物両方が理想的な物件に巡り合うことはなく、見学物件数は増える一方で難航。

イメージしたのは、学生時代に全国の旧道を自転車で廻った際に御世話になった山の中の古民家。自然豊かな環境の中での伝統的日本家屋のライフスタイルに憧れ、いつかそんな家に住みたいと思っていた。古民家やアンティークが好きで、10年以上前から日本民家再生協会(JMRA)のイベントなどにも参加していた。

中古一戸建ての住まい探しでは、思い通りの物件に出会えなかった小泉さん。そこで方向転換して、土地と建物は別々に探すことに。すると、ほどなく鎌倉の駅にも近い谷戸の大きなお屋敷の敷地が5分割され、売り出されるとの情報が。日本民家再生協会(JMRA)の事業登録者で鎌倉での古民家移築実績も多い建築家の大沢匠さん(O設計室)に相談し、土地はここに決定。建物は、「民家バンク」に登録された、空き家となって次の引き取り手を待っている古民家情報の中からイメージに合うものを求めて全国へ視野を広げた。実際に4~5軒見学した中で一目惚れしたのが、今回の岡山県の元呉服屋の蔵付き古民家だった。

Before:かつて岡山の旧道沿いで呉服店「和泉屋」を営んでいたという移築前の蔵付き古民家。平屋と蔵の西側には母屋があり、法事の際などは親戚が大勢集まりにぎわっていたが、この家の主亡きあとは空き家になっていた(写真提供:元オーナー・米本弘子さん)

Before:かつて岡山の旧道沿いで呉服店「和泉屋」を営んでいたという移築前の蔵付き古民家。平屋と蔵の西側には母屋があり、法事の際などは親戚が大勢集まりにぎわっていたが、この家の主亡きあとは空き家になっていた(写真提供:元オーナー・米本弘子さん)

After:敷地の関係で母屋は岡山に残し、平屋と蔵をそのままの配置で鎌倉に移築再生した小泉邸。「建物完成後は庭に着手、植栽が育つのが楽しみです。家は着々と進化中」(写真提供:新オーナー・小泉成紘さん)

After:敷地の関係で母屋は岡山に残し、平屋と蔵をそのままの配置で鎌倉に移築再生した小泉邸。「建物完成後は庭に着手、植栽が育つのが楽しみです。家は着々と進化中」(写真提供:新オーナー・小泉成紘さん)

縁側に並ぶ木製建具の美しさに一目惚れ、丁寧に手仕事で解体し、運ばれ、鎌倉で復元

「縁側にピシッと並んだ一本レールの木製建具の繊細な美しさが決め手でした。平屋部分は建物に敬意を払って、そのままの姿を復元することにこだわりました」という小泉さん。岡山の元呉服店で奥座敷の離れとして使われていた平屋は、明治時代の建築。それを手仕事で丁寧に解体し、鎌倉に運び、また元の通りに復元する。「古民家移築の工程の中で移築設計や現場監理が大変なのはもちろんですが、実は最も気を遣うのが解体です。古い建物だけに壊れてしまうと替えはありませんし、再生するときのことも考えながら、細かく番付けして設計図に反映していきます。解体には慎重さはもちろん技術が必要で、今ではこれができる職人も少なくなりました」と建築家の大沢さん。

明治時代の平屋と蔵をL字に配置して完成した小泉邸。縁側には波打つレトロなガラスの木製建具が正面7枚、左手に4枚、計11枚一本のレールに並ぶ繊細さ。平屋部分の木の風合いと蔵部分の漆喰の白と焼杉の黒のモノトーンのコントラストが印象的(写真撮影/高木 真)

明治時代の平屋と蔵をL字に配置して完成した小泉邸。縁側には波打つレトロなガラスの木製建具が正面7枚、左手に4枚、計11枚一本のレールに並ぶ繊細さ。平屋部分の木の風合いと蔵部分の漆喰の白と焼杉の黒のモノトーンのコントラストが印象的(写真撮影/高木 真)

(撮影/高木 真)

一本レールに木製建具が並ぶ繊細さに一目惚れしたため、引き違い用のレールを増やすことなく、あえて元の姿のままに再生。そのため、風雨をよけるため雨戸にしたり、通風のため網戸にする際は、ガラス戸を一枚ずつ外して入れ替えていくという手間も力仕事も伴う。不便さあっての美しさ、そして日本家屋での暮らしはひと昔前までこれが当たり前だった(撮影/高木 真)

一本レールに木製建具が並ぶ繊細さに一目惚れしたため、引き違い用のレールを増やすことなく、あえて元の姿のままに再生。そのため、風雨をよけるため雨戸にしたり、通風のため網戸にする際は、ガラス戸を一枚ずつ外して入れ替えていくという手間も力仕事も伴う。不便さあっての美しさ、そして日本家屋での暮らしはひと昔前までこれが当たり前だった(撮影/高木 真)

屋根の鬼瓦や棟瓦にあたる部分は、岡山の井原地域独自だという珍しい波模様の粋な形状。瓦の一部は劣化して耐久性に問題ありと診断されたため、足りない瓦は全く同じ形に複製して元の姿に復元された。一方、岡山では総瓦屋根だったが、それでは鎌倉では重厚過ぎると判断。上部を瓦、下部を銅板葺きに変更して街並みとの調和を図っている(写真撮影/高木 真)

屋根の鬼瓦や棟瓦にあたる部分は、岡山の井原地域独自だという珍しい波模様の粋な形状。瓦の一部は劣化して耐久性に問題ありと診断されたため、足りない瓦は全く同じ形に複製して元の姿に復元された。一方、岡山では総瓦屋根だったが、それでは鎌倉では重厚過ぎると判断。上部を瓦、下部を銅板葺きに変更して街並みとの調和を図っている(写真撮影/高木 真)

そのままの姿に復元、オリジナルの工夫を盛り込んで設計変更、古民家移築は自由自在

岡山にあった「母屋」「離れ」「蔵」の3つの建物からなる古民家のうち、敷地の関係で「離れ」の平屋と「蔵」の2つが移築された小泉邸。平屋は外観・内観共に元の姿に忠実に復元され、おもてなしスペースに。一方蔵は、生活空間として元の構造を活かしつつ、全面的に設計変更。それぞれに、現代ならではの新たな工夫やチャレンジがみられることも興味深い。

(写真撮影/高木 真)

おもてなしスペースとして、元の姿に忠実に復元された二間続きの和室。ところが床の間の上の小さな引き戸を開けると、なんと奥のキッチンと繋がる設計上のアイデアが盛り込まれている。「開放すると想像以上に気持ちいい風が通り抜けて驚きました」と小泉さん(写真撮影/高木 真)

おもてなしスペースとして、元の姿に忠実に復元された二間続きの和室。ところが床の間の上の小さな引き戸を開けると、なんと奥のキッチンと繋がる設計上のアイデアが盛り込まれている。「開放すると想像以上に気持ちいい風が通り抜けて驚きました」と小泉さん(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

小泉邸の蔵の2階は構造材を全てそのまま見せるデザインの勾配天井にして、更に中央の白い漆喰壁を大画面としてプロジェクター投影ができる大空間。「元々の蔵は倉庫のため、窓も少なく天井も低めのつくり。蔵を快適な生活空間にするため、元の構造材に60センチ分足して天井を高くしたり窓も増やすなどの設計上の工夫をしています」と建築家の大沢さん(写真撮影/高木 真)

小泉邸の蔵の2階は構造材を全てそのまま見せるデザインの勾配天井にして、更に中央の白い漆喰壁を大画面としてプロジェクター投影ができる大空間。「元々の蔵は倉庫のため、窓も少なく天井も低めのつくり。蔵を快適な生活空間にするため、元の構造材に60センチ分足して天井を高くしたり窓も増やすなどの設計上の工夫をしています」と建築家の大沢さん(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

キッチンは造作で、古民家だけに天板はあえてステンレスや人造大理石でなく木に挑戦。使用したのはもちろん古材、群馬の養蚕農家の梁を入手して加工した、厚みがある松らしき一枚板(写真撮影/高木 真)

キッチンは造作で、古民家だけに天板はあえてステンレスや人造大理石でなく木に挑戦。使用したのはもちろん古材、群馬の養蚕農家の梁を入手して加工した、厚みがある松らしき一枚板(写真撮影/高木 真)

(写真撮影/高木 真)

椹(さわら)の浴槽に大正時代のアンティークのステンドグラスが映える浴室。壁はなんと漆喰塗り。湿気の多い鎌倉でこれを実現するためには、湿気がこもらないように、浴室部分の基礎コンクリートを土台から立ち上げ、スノコ下はそのまま排水と通気ができるよう工夫されている(写真撮影/高木 真)

椹(さわら)の浴槽に大正時代のアンティークのステンドグラスが映える浴室。壁はなんと漆喰塗り。湿気の多い鎌倉でこれを実現するためには、湿気がこもらないように、浴室部分の基礎コンクリートを土台から立ち上げ、スノコ下はそのまま排水と通気ができるよう工夫されている(写真撮影/高木 真)

昔ながらのヒューズを使った配電盤も特注品。これをつくれる職人さんを探すのも一苦労だったという(写真撮影/高木 真)

昔ながらのヒューズを使った配電盤も特注品。これをつくれる職人さんを探すのも一苦労だったという(写真撮影/高木 真)

歴史ある家を新たな場所で再生する「古民家移築」は、日本の伝統的木造建築ならではの技

移築前には現在の持ち主で古民家移築の施主である小泉さんが岡山に訪れ、移築後は元オーナー一族が鎌倉に逆訪問。取材時も、元オーナーの米本さん親子が遊びに来ていた。「岡山にあったころから空き家になってしまい、自宅も離れているため定期的に掃除に行くのも負担になっていました。処分には解体費用も掛かるし、なんといっても思い出が詰まった家です。民家バンクに登録したときは、バラバラに解体され木材になってしまうと覚悟していただけに、家がそのまま残って感激しています」、と感慨深げ。いまや岡山を離れ全国バラバラに住む親戚たちも、鎌倉の小泉邸を見学に来て、思い出話に花が咲いたという。まさに家が繋ぐ縁、そのものだ。

明治時代に2間続きの和室で行われた結婚式(写真左:提供元オーナー・米本弘子さん)と、現在の小泉邸に元オーナーである米本さん親子が訪ねてきた際の写真(写真右:撮影/長井純子)。全く同じ造りの和室で、岡山にいると錯覚するほどだという

明治時代に2間続きの和室で行われた結婚式(写真左:提供元オーナー・米本弘子さん)と、現在の小泉邸に元オーナーである米本さん親子が訪ねてきた際の写真(写真右:撮影/長井純子)。全く同じ造りの和室で、岡山にいると錯覚するほどだという

気になるのは、古民家移築のコスト面。「古民家移築の建築コストの目安は一般的な新築の2~3割増しでしょうか」と建築家の大沢さん。空き家となった古民家は無償で譲り受けることができるので、これらの材料費は基本不要、成約時に日本民家再生協会(JMRA)への紹介料のみ。ただし、特に繊細な作業と技術を要する解体費と移送費が新築にない費用としてプラスされる。やりようによっては安くもなるし、こだわるとキリがなく、コストは千差万別だという。小泉邸の場合、元の形に復元することにこだわったため解体費を含めて4250万、坪単価は約145万。確かに割高になるものの、この本物ならではの魅力と歴史の重みには変えがたい。

「築100年の家を再生したら、少なくともあと100年、築200年なら200年は持ちます」と大沢さん。「敷地の関係で岡山に残した母屋も素晴らしい建物、活用されることを願っています」と小泉さん。日本各地に数多く残る古民家を一棟でも多く残したい、という思いは、小泉邸の移築再生に関わった人全員共通だ。

秋田の酒蔵を鎌倉に移築し2002年完成した「結の蔵」も建築家・大沢さんの設計によるもの。古いものを大切にする鎌倉の象徴的撮影スポットのひとつで、大沢さんのO設計室もこの一室に入居している(写真撮影/高木 真)

秋田の酒蔵を鎌倉に移築し2002年完成した「結の蔵」も建築家・大沢さんの設計によるもの。古いものを大切にする鎌倉の象徴的撮影スポットのひとつで、大沢さんのO設計室もこの一室に入居している(写真撮影/高木 真)

1997年に設立された日本民家再生協会(JMRA)は、日本の伝統文化である民家を蘇らせ次代に引き継ぐため、情報誌や書籍の発行、各種イベントを定期開催。民家を譲りたい人と譲り受けたい人を取り持つ「民家バンク」もあり、情報誌「民家」には登録された民家の情報が掲載されている(写真撮影/長井純子)

1997年に設立された日本民家再生協会(JMRA)は、日本の伝統文化である民家を蘇らせ次代に引き継ぐため、情報誌や書籍の発行、各種イベントを定期開催。民家を譲りたい人と譲り受けたい人を取り持つ「民家バンク」もあり、情報誌「民家」には登録された民家の情報が掲載されている(写真撮影/長井純子)

築百年を超える家も、移築して再生されることで建築法上は「新築」扱い。そして、百年の年月を経て強度も増した木材は、更に百年は持つという。時代や空間を越えてご縁を繋ぎ、次世代に繋がる家。取材を通じて、出会った施主である現オーナー、元オーナー、建築家を始めとする工事関係者、そして何より家自体が喜んでいるのを感じる。空き家は増加する一方、日本全国に残る古民家が一つでも多く壊されることなく次世代に繋がることを心より祈る古民家在住ライターであった。

>関連記事:築100年超の蔵付き古民家を鎌倉に移築再生、妥協無しで理想を追求したこだわりの家

●取材協力
NPO法人 日本民家再生協会(JMRA)
O設計室元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170325_main.jpg

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イマドキの学生の部屋選び、通学時短を重視する傾向に。ほかには…?

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イマドキの学生の部屋選び、通学時短を重視する傾向に。ほかには…?

学生用マンションでひとり暮らしをする人は、「駅」の近さより通学する「学校」の近くであることが決め手になる。そんな調査結果を学生情報センターが発表した。通学の『時短』を重視する傾向は、学生にも及んでいるようだ。調査結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」の結果を発表/学生情報センター学生も通学の『時短』を重視する!?

まず、「今の部屋に決めた理由」(複数回答)を聞いた上位の結果を見よう。
1000人以上の学生が「学校から近い」と「バス・トイレ別」を決め手にしたことが分かる。

1位:「学校から近い」(1170人)
2位:「バス・トイレ別」(1080人)
3位:「駅から近い」(763人)
4位:「セキュリティ」(760人)

立地については、駅から近くても通学するのに学校から遠い、というのは敬遠されるということだろう。通学でも『時短』重視の傾向がうかがえる結果だ。

また、「今の住まいの満足度」(単一回答)を聞くと、72.4%の学生が満足(「大変満足」24.5%+「ある程度満足」47.9%)と回答した。一方、「今の住まいにいつまで住むか」(単一回答)を聞くと、75.0%の学生が「卒業するまで」と回答した。「満足」あるいは「普通」と感じている学生が多いからだろうが、新しい部屋探しには時間も費用もかかることもあって、積極的に住み替えを考えてはいないという状況がうかがえる。

「今の住まいの満足度」(左)と「今の住まいにいつまで住むか」(右)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

「今の住まいの満足度」(左)と「今の住まいにいつまで住むか」(右)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

オススメは駅より学校の近さ。ただし地域差も…

次に、後輩にアドバイスするという想定で「部屋を選ぶときの重視項目」を聞いた結果を見ていこう。

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)1.全国(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)1.全国(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

後輩に重視すべきとする三大項目は、「学校の近く」(61.3%)、「スーパーの近く」(59.9%)、「駅の近く」(51.9%)だ。「スーパー」のほうが「コンビニ」より品ぞろえが多いから、より重視すべしということか。

ただしこれが地域によって、少し変わってくる。

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)2.東京都と東京都を除く全国との比較(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)2.東京都と東京都を除く全国との比較(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

同社の本社が京都にあることから、回答した学生が最も多いのは京都府(18.2%)で、次いで東京都(17.4%)になるのだが、東京都の学生とそれ以外の府県の学生で比較すると、順位や重視度が変わってくる。

「学校の近く」が1位であることに違いはないが、2位は東京以外の学生では「スーパーの近く」が僅差で続くのに対し、東京都の学生では「駅の近く」が逆転して2位に上がる。また、東京都の学生は「通学に乗り換えがない」が27.0%で6位に上昇(東京都以外は16.2%で9位)するのも、注目したい点だ。

通勤通学時間帯には、車内の混雑度や駅間移動の混雑度が激しく、ストレスがたまりやすい東京都ならではの観点といってよいだろう。

イマドキの学生は「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が必需品?

次に「家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービス」(複数回答)を見ていこう。

ダントツの「バス・トイレ別」は別格として、「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が上位に来るのがイマドキの学生らしい。

1位:「バス・トイレ別」63.3%
2位:「無料Wi-Fiサービス」40.7%
3位:「宅配ボックス」37.8%
4位:「オートロック」36.3%
5位:「大きな収納スペース」36.2%
6位:「独立洗面化粧台」33.8%

特に、「宅配ボックス」は2年前の同じ調査の6位から3位に浮上しており、2年前に筆者が「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が新三種の神器になると予測した通りになってきた。

さていよいよ、合格発表を受けて学生が新居を探すシーズンになってくる。部屋探しで重視するポイントは人それぞれだろうが、先輩の意見はどれだけ参考になるだろうか?

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170407_main.jpg

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自宅をオフィスに! テレワークで取り入れたい「家なかオフィス化」アイデア5つ

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自宅をオフィスに! テレワークで取り入れたい「家なかオフィス化」アイデア5つ

場所や時間にとらわれない柔軟な働き方“テレワーク(リモートワーク)“。その普及によって、働く場所も多様化している。今回は、自宅の一部にワークスペースを設ける「家なかオフィス化」のヒントが詰まったアイデアの数々を、リノベーション事例などを通して紹介したい。
【ヒント1】リビング内にワークスペースを設ける

自宅の中にワークスペースを設ける際、家の中のどこにスペースを確保するかは大問題。その選択肢のひとつがリビングだ。リビングなら、家族の様子を見ながら、あるいは家族の気配を感じながら仕事ができる。ただその一方で、仕事に集中しにくいというデメリットもあるようだ。その解消法も併せて紹介しよう。

【G-FLAT/兵庫県神戸市垂水区Fさん】
室内窓に面して2つのデスクが並ぶワークスペースは、夫婦が同時に作業することもできる。デスクは複数のモニターを置いてもスペースに余裕がある(写真提供/G-FLAT)

室内窓に面して2つのデスクが並ぶワークスペースは、夫婦が同時に作業することもできる。デスクは複数のモニターを置いてもスペースに余裕がある(写真提供/G-FLAT)

ワークスペースの背中側。可動棚のある本棚やプリンターも手が届く距離にあり、効率的に仕事が進められる(写真提供/G-FLAT)

ワークスペースの背中側。可動棚のある本棚やプリンターも手が届く距離にあり、効率的に仕事が進められる(写真提供/G-FLAT)

一戸建ての1階に、リビングとつながるワークスペースを設けた例。リビングとワークスペースとの間は大きな窓のある間仕切り壁で隔てている。2つのデスクを窓に向けて置くことで、窓を通して家族の気配を感じ取り、リビングの様子を確認できるワークスペースが実現した。

このような間取りにしたのは、妻が在宅のイラストレーターであり、夫も自宅でデザイン系の作業をすることがあるから。子どもが2歳と幼く、子どもが寝ている間や機嫌の良いときにしか仕事ができない妻にとって、ふと顔を上げればリビングに居る子どもの様子が確認できるのは理想的。以前の賃貸マンションでは、一室をワークスペースとしていたため、集中こそできるものの、他の部屋の様子は分からなかった。なお、集中したいときは、小窓のロールスクリーンを下ろしてワークスペースに“こもる”ことも可能だ。

【リビタ/東京都武蔵野市Oさん】
67.20平米・2LDKのマンションのリビングの玄関側を小部屋に仕立ててワークスペースに。フリーランスで働く妻にとって自宅内のワークスペースはかねてからの念願だった(写真提供/リビタ)

67.20平米・2LDKのマンションのリビングの玄関側を小部屋に仕立ててワークスペースに。フリーランスで働く妻にとって自宅内のワークスペースはかねてからの念願だった(写真提供/リビタ)

リビング越しに窓の外の景色が見えるほどに開放的な点には大満足。ガラス窓を開けるとリビングにいる家族と会話も可能。集中したいときには窓とカーテンを閉めれば完全な個室にすることもできる(写真提供/リビタ)

リビング越しに窓の外の景色が見えるほどに開放的な点には大満足。ガラス窓を開けるとリビングにいる家族と会話も可能。集中したいときには窓とカーテンを閉めれば完全な個室にすることもできる(写真提供/リビタ)

リビングの一角にガラス張りの小部屋を設けてワークスペースとした例。フリーランスで活動している妻のワークスペースをつくる際、当時5歳と2歳だった子どもたちのリビングでの様子を視界に入れながら仕事ができるようにと、ガラス張りにした。夫のテレワーク時にも利用するなど、夫婦でともに活用しつつ、子どもが小学生になったときに子ども部屋に転用することも想定している。

オフィスやカフェなどよりも落ち着く上、周囲に気を遣わずに電話ができるし、ガラス部分のカーテンを閉めれば、ダイニングテーブルやコーナー机などよりも集中できるテレワーク環境となる。

【リビタ/東京都杉並区Tさん】
96.55平米の3LDKのマンションを、「小学校のような家」というコンセプトのもとにリノベーション。このワークスペースは「図工室」という位置づけだ(写真提供/リビタ)

96.55平米の3LDKのマンションを、「小学校のような家」というコンセプトのもとにリノベーション。このワークスペースは「図工室」という位置づけだ(写真提供/リビタ)

LDKや廊下との間を腰高のパーテーションでゆるやかに区切ったワークスペースの例。定期的にテレワークのある夫、アクセサリー製作の仕事をする妻、大学生の長女と中学生の長男(ともにリノベーション当時)の4人がそれぞれに必要なスペースを確保しようとしたとき、完全に区切ると1人分のスペースが非常に狭くなることから、LDの一部をゆるやかに隔てることで夫婦のワークスペースを確保した。

夫は月に2回ほどのテレワーク時、妻は週2日ほどアトリエに出勤する以外の時間、このワークスペースで仕事をしているが、リノベーション計画当初に意図した通りに、広々とした開放感を味わっているという。その副産物として家族のコミュニケーションも増え、そういった意味でも“風通し”が良くなっているのだとか。

【ヒント2】仕事スペースと生活スペースを分けてメリハリを

オン・オフを明確に切り替えたいという人には、ワークスペースを生活空間から完全に分離するのが効果的。いわゆる“SOHO”(Small Office/Home Office)だ。仕事中はそこに“こもる”ことで、仕事や作業に没頭できるようになる。

【ブルースタジオ/東京都練馬区Nさん】
80.30平米・2LDKの一室をワークスペースとライブラリーに分割。コンパクトなワークスペースなだけに、仕事に必要な機器や資料はすべて手に届く範囲にある(撮影/Sayaka Terada[ZODIAC])

80.30平米・2LDKの一室をワークスペースとライブラリーに分割。コンパクトなワークスペースなだけに、仕事に必要な機器や資料はすべて手に届く範囲にある(撮影/Sayaka Terada[ZODIAC])

LDKからワークスペースへとつながる廊下の壁面を若草色に。ブルー基調のリビングからこの”森”を通って移動することで、アタマが仕事モードになる(撮影/Sayaka Terada[ZODIAC])

LDKからワークスペースへとつながる廊下の壁面を若草色に。ブルー基調のリビングからこの”森”を通って移動することで、アタマが仕事モードになる(撮影/Sayaka Terada[ZODIAC])

マンションの2LDKの洋室の片方を蔵書のライブラリーとワークスペースに分割して使っている例。それぞれのスペースは狭いが、その分、機能を集中させることができ、ワークスペースと生活空間がきっちり分離されている。そのため、フリーランスのデザイナーとして自宅で仕事をするNさんにとっても、オン・オフのメリハリの利いたワークスタイルが可能になっているが、その一方で、両スペースを行き来する際の切り替えという課題も。そこで、生活空間のテーマカラーをブルーとし、ワークスペースへと続く壁の色を自社のテーマカラーである若草色に彩ることで、ワークスペースに向かう際は、常に若草色の“森”を抜ける気分になるのだとか。色彩的な効果を利用して気分を変えているのだ。

趣味と仕事がほぼ連動しているNさんにとって、この部屋での暮らしは至って快適なのだそう。リビングから “森”を通ってワークスペースに向かい、思う存分“こもる”ことができるのは、SOHOスタイルならではの楽しみなのかもしれない。

【ヒント3】狭いスペースを利用してワークスペースを確保

限られた空間のなかでワークスペースを確保するためには、デッドスペースやちょっとした隙間を利用することもある。特にマンションでは、空間の有効活用は切実な問題だ。

【リノベる。/神奈川県鎌倉市T さん】
夜、リビングで夫婦の片方がくつろいでいるときに、もうひとりがワークスペースにこもったりして交互に使っている(写真提供/リノベる。)

夜、リビングで夫婦の片方がくつろいでいるときに、もうひとりがワークスペースにこもったりして交互に使っている(写真提供/リノベる。)

80.19平米・2LDKのマンションの玄関と寝室の間のスペースを利用。LD側の窓とバルコニー側の窓を開けると家中に風が通り、家全体が気持ちの良い空間となる(画像提供/リノベる。)

80.19平米・2LDKのマンションの玄関と寝室の間のスペースを利用。LD側の窓とバルコニー側の窓を開けると家中に風が通り、家全体が気持ちの良い空間となる(画像提供/リノベる。)

リビングから寝室へ向かう廊下の脇に秘密基地のような書斎を設けてワークスペースとしている例。限られた広さを有効に使って夫婦それぞれが持っていた蔵書を収納しながら集中できるスペースをつくるために、玄関と寝室の間の小さな空間を利用した。このアイデアは、「採光が良く風通しが良い家なので、気分に合わせて家の中のいろいろなところで過ごせるようにしたい」というそもそもの家づくりのコンセプトにも合致していた。

会社員の夫は在宅での作業やオンラインミーティングなどのときに、同じく会社員の妻は個人的なスタディースペースとしてこの書斎を利用。壁の色のトーンを落としたことで、集中できる空間になっている上、本やPC類がちょうど手の届く範囲に収まっているため、使い勝手も良いのだとか。入り口に扉を付けて個室にするようなことはせず、こもりながらも家族の雰囲気を感じ取れるようにしている。リビングやダイニングで仕事をすることもあり、「仕事は必ずここで」と限定していないところもT家流だ。

【ヒント4】事業者が提案するワークスペースも

UR賃貸住宅やハウスメーカーなども、自宅内にワークスペースを設けるプランを提案している。

【MUJI×UR/団地リノベーションプロジェクト】
玄関(左)から土間を介して右の多目的スペースに上がれる。玄関脇には可動棚のある収納スペースも(写真提供/MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト)

玄関(左)から土間を介して右の多目的スペースに上がれる。玄関脇には可動棚のある収納スペースも(写真提供/MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト)

玄関からもキッチンからも入れる2way方式なので、動線も効率的だ(画像提供/MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト)

玄関からもキッチンからも入れる2way方式なので、動線も効率的だ(画像提供/MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト)

株式会社MUJI HOUSEとUR都市機構が愛知県名古屋市の相生山団地で提案しているプラン。玄関土間から直接、多目的スペースに上がれるようになっている。納戸や趣味スペースとしても利用可能だ。

【セキスイハイム/パパママ個室】
夫婦それぞれに個別のスペースが設けられているので、夫婦が同じ時間に作業する場合でも、自分だけの空間が確保できる(写真提供/積水化学工業)

夫婦それぞれに個別のスペースが設けられているので、夫婦が同じ時間に作業する場合でも、自分だけの空間が確保できる(写真提供/積水化学工業)

主寝室との間にウォークインクローゼットを挟んでいることで、より一層、作業に集中できる空間に(画像提供/積水化学工業)

主寝室との間にウォークインクローゼットを挟んでいることで、より一層、作業に集中できる空間に(画像提供/積水化学工業)

セキスイハイムが提案している注文住宅のプランの一つ。主寝室のウォークインクローゼットの奥に書斎と洗面台付きのメイクアップコーナーが設けてある。夫婦それぞれに自分専用の空間があることで、自宅で作業をする時間が重なった際や、忙しい朝の身支度の際にも、お互いに気を遣わずに済む上、動線上にあるウォークインクローゼットに物がしまえるので、すっきりとした空間での作業が可能だ。

【ヒント5】お手軽なDIYでもワークスペースがつくれる

これまでに紹介した大掛かりなリノベーションなどをしなくても、自宅の中にワークスペースを設けることは可能だ。

例えば、広いリビングをパーテーションで仕切れば、仕切りの中をワークスペースとすることができる。パーテーション越しに家族の気配を感じ取りつつ、作業や仕事に集中できそうだ。

パーテーションは1万5000円くらいから入手可能だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

パーテーションは1万5000円くらいから入手可能だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

また、リビングの一角にデッドスペースがあれば、そのスペースちょうどのサイズにテーブル天板をカットし、伸縮式の脚をつけてスペースにはめ込むことで、作業コーナーが出来上がる。

必要な費用は8000円程度。テーブル天板や伸縮式の脚などは、ホームセンターなどで入手可能だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

必要な費用は8000円程度。テーブル天板や伸縮式の脚などは、ホームセンターなどで入手可能だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

フリーランスなどの在宅ワーカーや会社員がテレワークに際して導入し、大いに役立っている「家なかオフィス」。DIYなどの手段も含めれば、「家なかオフィス」実現への道は決して遠くない。まずはDIYでできる範囲で着手しつつ、近い将来のリノベーション、注文建築なども視野に入れながら、今から快適なワークスペースの計画を練ってはいかがだろうか?

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連載:「職住融合」テレワークが変えた暮らし元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170419_main.jpg

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家の個性をつくる三つのセオリー

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家の個性をつくる三つのセオリー

家の中の細部まで自分たちのこだわりを反映できるのはリフォームの魅力の一つ。今回は、住まい手の個性を表す家をつくるための三つのセオリーを紹介。
壁や床、建具やパーツを選ぶときの参考にしてみよう。

空間の雰囲気を決めるのは「素材」「仕上げ」「パーツ」の三つ!

空間を構成しているアイテムは、家具やファブリックなどのほかに、床、壁、天井、建具が含まれる。家具などのインテリアアイテムは賃貸住宅でも手軽に変えられるが、壁や床、建具、パーツは、リフォームでないと交換することが難しい空間要素だ。
中でも、面積の大きい壁や床、建具にこだわることは個性の演出により効果的で、パーツなどの細部にまで厳選することで、より自分好みの空間を完成できる。例えば、同じ床材でも仕上げによって表情を変えられ、パーツの組み合わせ方でインテリアスタイルを強調することもできる。今回は、家の個性をつくる空間要素のうち、素材、仕上げ、パーツの三つについて選ぶときのポイントを解説しよう。

THEORY1:「素材」~それぞれの特徴を理解する~(画像提供/PIXTA)

(画像提供/PIXTA)

壁や床、天井など室内空間に用いる素材には、むく材や珪藻土、タイル、石などの自然素材と、ステンレスや鉄、プラスチック、ガラスなどの人工素材がある。素材によって、やわらかみやあたたかさ、硬さや冷たさなど、見た目の印象や手触りに特徴がある。色や柄にこだわることも大事だが、素材がもつ特徴を把握した上で、希望するイメージに合うものを選びたい。

THEORY2:「仕上げ」~素材の活かし方を知る~(画像提供/PIXTA)

(画像提供/PIXTA)

仕上げとは、床や壁などの素材の表面に施す塗装や装飾のこと。同じ床材でも、仕上げ方法により色や質感は変わる。例えば、同じ種類のむく材を床に使った場合、色みを活かす無塗装か好みの色でペイントするかにより空間に与えるイメージは全く異なる。また、壁に珪藻土などを使う場合、コテの使い方により洋風にも和風にもなる。素材を選ぶ際には、仕上げ方法も併せて検討しよう。

THEORY3:「パーツ」~空間のバランスを考える~(画像提供/PIXTA)

(画像提供/PIXTA)

パーツにこだわることで、より統一感のある空間コーディネートに仕上がる。ドアノブやスイッチプレート、造作収納の取っ手やフックなどは、用いられている素材と、曲線や直線などのフォルムでテイストが決まる。  
パーツの色は、壁や天井、ドアの色になじませる方法と、空間のアクセントとなる色にする方法がある。どちらにするかは、家具やファブリックとのバランスで決めよう。

家の個性をつくりだすための三つのポイントを見てきた。それぞれのセオリーを踏まえた上で、「素材」「仕上げ」「パーツ」全ての細部にまでこだわりきると、家の中にも自分らしさを表現することができる。

構成・文/山南アオ

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170281_main.jpg

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「2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワード」「2020年の住まいトレンド」【1月人気記事まとめ】

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「2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワード」「2020年の住まいトレンド」【1月人気記事まとめ】

2020年が始まってはや1カ月が経ちました。SUUMOジャーナルで1月に公開した記事では、2020年の住まい動向を分析した「2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワードを発表!」「テレワークが住まいを変える!?2020年の住まいトレンドは『職住融合』」などが人気でした。TOP10の記事を詳しく紹介します。
2020年1月の人気記事ランキングTOP10はこちら!

1位 2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワードを発表!
2位 テレワーク導入に900社が理解示さず。流山市の民間シェアオフィスが挑む高い壁
3位 意外に高い平成世代の持ち家志向、住宅ローン選びでは…
4位 日本に居ながら留学生活? 多国籍シェアハウスのリアルな住み心地を聞いてみた
5位 テレワークが住まいを変える!?2020年の住まいトレンドは「職住融合」
6位  “子育てに人気の街”弊害も。テレワークが変える郊外の子育て
7位 “暖房をつけても寒い”は家に問題が! 解決策は「住まいの温活」
8位 「リノベ・オブ・ザ・イヤー2019」に見るリノベーション最新事情。“断熱性能”など4つのキーワード
9位 お墓は必要? 将来どうする? 漫画で「墓活(はかかつ)」を考えよう
10位 テレワークが変えた暮らし[6]湘南で見つけた新しい生き方。「サーフィンを楽しむ70歳になりたい」

※対象記事:2020年1月1日~2020年1月31日までに公開された記事
※集計期間:2020年1月1日~2020年1月31日のPV数の多い順

1位 2020年の不動産市場を読み解く3つのキーワードを発表!

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

1月の恒例企画、さくら事務所会長の長嶋修氏による新年の不動産市場についての予測は「さらなる災害リスク」「不動産価格のピーク感」「政治の動き」がキーワードです。2019年に相次いだ自然災害や、消費増税の影響が、不動産にどうでるかを解説しています。

2位 テレワーク導入に900社が理解示さず。流山市の民間シェアオフィスが挑む高い壁

(写真/Pexels)

(写真/Pexels)

テレワークが推進されてはいるものの、企業における導入率はわずか19.0%。テレワーク定着のためのシェアオフィスを運営する尾崎えり子さんは、営業先の企業から「ママなんてバイトで満足でしょ」などと言われたこともあったといいます。その奮闘と成果を伺うと、日本の厳しい現状も見えてきました。

3位 意外に高い平成世代の持ち家志向、住宅ローン選びでは…

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

生活価値観や住まいについて「平成世代」「ロスジェネ世代」「バブル世代」に区分して比較。住宅ローン返済への不安が強い平成世代は、団体信用生命保険加入時にがん保障などの特約を手厚くしている傾向が顕著です。近年はプラスできる特約も多彩になっており、将来の不安解消へ向けた対策をしっかり行っている様子がうかがえました。

4位 日本に居ながら留学生活? 多国籍シェアハウスのリアルな住み心地を聞いてみた

(写真提供/ボーダレスハウス)

(写真提供/ボーダレスハウス)

日本に居ながら、異文化に触れることができ、語学力が向上すると注目を集めている多国籍シェアハウスの魅力や実態を、実際に住んでいる日本人、外国人の経験から紹介します。生活に根付いた生きた語学を互いに教えあえるだけでなく、多文化に触れることで将来の夢も広がっているようです。

5位 テレワークが住まいを変える!?2020年の住まいトレンドは「職住融合」

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住まい・飲食・雇用などの新たな兆しを見出すリクルートホールディングスによる「2020年のトレンド予測」の「住まい領域」では、家や街なかなどの「オフィス化」が進み、職場に縛られず住む街を選ぶことも進むと予想。DIYやリノベーションで自宅に快適なワークスペースをつくる動きや、実例にもふれています。

6位  “子育てに人気の街”弊害も。テレワークが変える郊外の子育て

(写真/片山貴博)

(写真/片山貴博)

2位にランクインした流山市の事例の続編です。子育てに人気の街であるがゆえに難しい仕事と家庭の両立を、テレワークでどう解決したか。また地域のコミュニティに参加することで実現した豊かな子育てや、子どものキャリア教育につながる取り組みも紹介しています。

7位 “暖房をつけても寒い”は家に問題が! 解決策は「住まいの温活」

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

暖房による光熱費が気になる季節ならではのトピック。屋内の暖房の熱を逃さない「家の温活」はどうしたらいいのか。戸建てとマンションのそれぞれの断熱リフォームや手軽なDIYの方法、これから家を買うときのチェック方法まで紹介しています。

8位 「リノベ・オブ・ザ・イヤー2019」に見るリノベーション最新事情。“断熱性能”など4つのキーワード

(写真提供/株式会社大城)

(写真提供/株式会社大城)

1年を代表するさまざまなリノベーション作品の受賞作から見えてきた最新事情を紹介。今回は住宅性能を向上させるリノベ事例に大きな注目が集まりました。リノベというと、デザインなどの見た目に注目が集まりがちですが、新築以上の機能性を追求した実例から、リノベの世界の転換期を感じることができます。

9位 お墓は必要? 将来どうする? 漫画で「墓活(はかかつ)」を考えよう

(画像提供/140B)

(画像提供/140B)

少子化や人口減少の進む現代日本では、生きている間に住む家と同じく亡くなった後の住まいであるお墓の在り方も、多様化が進んでいます。お墓にまつわる諸問題や疑問を取り上げた「まんが 墓活」著者にインタビューし、作品への思いや印象に残ったお墓について聞きました。

10位 テレワークが変えた暮らし[6]湘南で見つけた新しい生き方。「サーフィンを楽しむ70歳になりたい」

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

勤務先のテレワーク導入で湘南に引越した女性の事例。通勤や出社にかけていた時間やお金を、サーフィンや家庭菜園といった趣味ややりたいことに費やすうちに、人生設計までも変わりました。現在は会社務めを辞め、フリーの翻訳家として充実した生活を送っています。

2020年の住まいのトレンドがどうなるのかの予測や最新動向をチェックした記事は、1月ならではの結果と言えそう。また、暦の上では春とはいえ、まだまだ厳しい寒さが続く季節。家の断熱がDIYでもかなうなら、今からでもチェック、実践する価値がありそうです。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170497_main.jpg住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

パリの暮らしとインテリア[4] アーティスト夫婦が暮らす歴史的集合住宅。旅のオブジェに囲まれて

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パリの暮らしとインテリア[4] アーティスト夫婦が暮らす歴史的集合住宅。旅のオブジェに囲まれて

私はフランスのパリに暮らすフォトグラファーです。パリのお宅を撮影するたびに、スタイルを持った独自のイン テリアにいつも驚かされています。 今回はモンマルトルにあるアーティストのための集合住宅<Les fusains(レ・フザン)>に住むファブリスさん(夫)とベアトリスさん(妻)のアトリエ兼住居に訪れました。
特殊集合住宅<Les fusains/レ・フザン>をまずは紹介

レ・フザンはパリ18区モンマルトルの丘の麓、モンマルトル墓地近くのトゥルラク通り22番地に位置するアーティストの街です。1900年から着工され、1906年からアーティストのためのアトリエ&住居としてレンタルされ始めました。街といっても入り口はアパルトマンの扉をくぐって入ります。そこから先は迷路のような小道になっていて車は入ることができません。

一見普通のパリのアパルトマンですがこの建物の後ろに迷路のような小道があり、両脇に43世帯のアトリエ&住居が建てられています(写真撮影/Manabu Matsunaga)

一見普通のパリのアパルトマンですがこの建物の後ろに迷路のような小道があり、両脇に43世帯のアトリエ&住居が建てられています(写真撮影/Manabu Matsunaga)

レ・フザンはパブロ・ピカソやモディリアーニらが住んでいたアトリエ兼住宅バトー・ラヴォワール(洗濯船)のように、多くの有名な画家や彫刻家の住居や、仕事場であった場所として知られています。オーギュスト・ルノワールはここでワークショップを行い、アンドレ・ドランは1906年に、ジョルジュ・ジュバンは1912年に、ピエール・ボナールは1913年からここに住み作品をつくり出しています。このような芸術家が集まる集合住宅(街)としては、とても古い歴史を持ちます。
それが今もなお受け継がれ、アーティストに愛される街なのです。

ドアを開けて一歩中へ入ると、そこはもう異次元の世界

急斜面の道路から建物の中に入ると、右手はアパルトマンタイプの背の高い建物があり、小道が迷路のように入り組む両脇には一軒家が連なります。古き良き時代のパリにタイムスリップしたような気分になるのは、パリでは珍しい一軒家がたくさんあるからでしょう。大小含めた40世帯が集まるレ・フザンは全てアトリエと居住スペースが備わっているため、住民たちの交流がとても密だとか。今回訪れたのは冬だったので「今は草木たちが静かだけれど、春から夏にかけては花が咲き乱れ葉が茂りパリではなくカンパーニュのような場所になるの」とベアトリスさん。その時期は皆が外でアペリティフをしたり、夕食を食べたり、道というより庭の感覚で過ごしているそうです。

レ・フザンに入って右手にある大きなガラス窓のあるアパルトマン。大きなガラス窓はアーティストが自然光で作品を仕上げるためにとても大切。全てのアトリエがそんな工夫がなされているといいます(写真撮影/Manabu Matsunaga)

レ・フザンに入って右手にある大きなガラス窓のあるアパルトマン。大きなガラス窓はアーティストが自然光で作品を仕上げるためにとても大切。全てのアトリエがそんな工夫がなされているといいます(写真撮影/Manabu Matsunaga)

一軒家の連なる道には全ての家の前にはテーブルと椅子が用意されていて、家の一部として機能していることが伺えます。お隣とテーブル越しに楽しい会話やひとときを過ごす社交場にもなっています(写真撮影/Manabu Matsunaga)

一軒家の連なる道には全ての家の前にはテーブルと椅子が用意されていて、家の一部として機能していることが伺えます。お隣とテーブル越しに楽しい会話やひとときを過ごす社交場にもなっています(写真撮影/Manabu Matsunaga)

小道や壁、いたるところに作品が置かれているアートスペース

彫刻や壁画などが置かれた小道は、前は誰もが入ってこれる場所でもあったそう。「作品を色々な人に見てもらうのはアーティストとしてとてもうれしいこと、しかし作品が盗まれる事件が起きるようになり住人しか入ってこれないようになってしまった」とファブリスさんは少し残念そうだった。その作品は過去に住んでいたアーティストが置いていった物、そして今の住人の作品が入り混じって置かれ時代が交差した興味深いアートスペースになっています。もうひとつ興味をそそるのが、アーティスト、画家であったり彫刻家であったり、そんな人たちの仕事場であるということはとても魅力的です。個性的で、ここから作品が生まれてくることを想像するとワクワクした気分になります。

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新旧含めた作品、主に彫刻が置かれている小道。「まるで旅をしているような迷路でしょう?」と、壁の前でレ・フザンの良さを語るおふたり(写真撮影/Manabu Matsunaga)

新旧含めた作品、主に彫刻が置かれている小道。「まるで旅をしているような迷路でしょう?」と、壁の前でレ・フザンの良さを語るおふたり(写真撮影/Manabu Matsunaga)

レ・フザン内で2軒目のアトリエへ引越し

お二人は10年前に今のアトリエに引越して来ました。その前も同じレ・フザン内にある60平米のアトリエ兼住居に住んでいました。「90平米のアトリエが空いたというので、すぐに引越しを決めました。北向だけれど光の入り具合もよかったし、やはり広い方が作品をつくりやすいと思ったからです」と、ファブリスさん。
住み慣れたレ・フザン内での引越しは、なんの苦労もなかったと語ります。彼らがやったことは、壁の白いペンキを塗り直し、階段をワインレッドに塗っただけだそう。1階は小さなキッチン、サロンとアトリエが一室になった自然光いっぱいのスペース。2階は寝室とアトリエから吹抜けになった浴室があります。浴室というより、部屋の中に風呂桶が置かれた個性的なつくりになっています。

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天井まで5、6mはあるアトリエのガラス窓。その続きにサロンが配置されています。サロンの天井部分が2階の浴室ルームに(写真撮影/Manabu Matsunaga)

天井まで5、6mはあるアトリエのガラス窓。その続きにサロンが配置されています。サロンの天井部分が2階の浴室ルームに(写真撮影/Manabu Matsunaga)

2階の浴室ルームからアトリエを見下ろすことができます(写真撮影/Manabu Matsunaga)

2階の浴室ルームからアトリエを見下ろすことができます(写真撮影/Manabu Matsunaga)

1階のサロン部分の上が浴槽の置かれた部屋。アトリエから吹抜けになっているので光いっぱいのスペースになっています。浴槽は黒に自分たちで塗りました。タンスは田舎の家から持って来た年代物(写真撮影/Manabu Matsunaga)

1階のサロン部分の上が浴槽の置かれた部屋。アトリエから吹抜けになっているので光いっぱいのスペースになっています。浴槽は黒に自分たちで塗りました。タンスは田舎の家から持って来た年代物(写真撮影/Manabu Matsunaga)

朝はベッドの中で朝食をとるのがお二人の日課。和ダンスは友達から譲り受けたもの(写真撮影/Manabu Matsunaga)

朝はベッドの中で朝食をとるのがお二人の日課。和ダンスは友達から譲り受けたもの(写真撮影/Manabu Matsunaga)

両親からの影響で、アートに興味を持ち、旅好きになった

ファブリスさん一家はもともと芸術家一家で、お父さんはテレビの番組制作に携わっていたり、ユネスコの仕事で20回以上日本を訪れたことのある親日家でもあったそうです。日本の武道の本を書く際に三島由紀夫をインタビューしたこともあるとか。お母さんは写真家で、マン・レイのミューズであり写真のモデルとしても交流があったそうです。そんな環境の中、彼は自然にアートの世界に入り込み、小さいときはいつでも絵を描いていたといいます。今では、絵や写真や映画のシナリオを仕事にしているマルチアーティストです。
ベアトリスさんは芸術専攻の歴史家でした。最初は文学が大好きでしたが、父が建築家であった影響で次第にアートに興味を持つようになりました。そのセンスを買われ10年間Youji Yamamotoのプレスとして働きます。Youji Yamamotoのことはヴィム・ベンダース監督のドキュメント映画『都市とモードのビデオノート』で知り、非常に興味を持ったとのことでした。その後、化粧品メーカーの立ち上げなどに参加したり、日本文化を伝えるギャラリーに在籍していました。

ファブリスさんのお母様をモデルにしてマン・レイが撮った写真がサロンの一角に飾られています(写真撮影/Manabu Matsunaga)

ファブリスさんのお母様をモデルにしてマン・レイが撮った写真がサロンの一角に飾られています(写真撮影/Manabu Matsunaga)

ベアトリスさんの家族が所有していた古い家具と宝石入れ。「旅で見つけて来たものを飾ることで自分らしいコーナーになる」とか(写真撮影/Manabu Matsunaga)

ベアトリスさんの家族が所有していた古い家具と宝石入れ。「旅で見つけて来たものを飾ることで自分らしいコーナーになる」とか(写真撮影/Manabu Matsunaga)

(写真撮影/Manabu Matsunaga)

(写真撮影/Manabu Matsunaga)

旅をして見つけたものを飾るのが彼らのスタイルをつくり出す

そんなお二人の共通の趣味は旅行。数年前1年かけて世界旅行に南米から出発し、その年は冬を体験することなく過ごしたそうです。「今でも1年に2、3回は遠くに旅に出ます。旅で色々な文化、人、景色、匂い、物に触れることが人生の大きなポイントだと私たちは考えているからです」とベアトリスさん。確かに部屋のいたるところに日本をはじめインド、メキシコ、さまざまな国のオブジェが飾られています。
それらと同じ空間に家族代々使われてきた家具が置かれ、このミックス具合が彼らの独自のスタイルをつくり出しています。そして、家族のものといえば、実は有名食器ブランド「アスティエ・ド・ヴィラット」もそう。
創立者の一人イヴァン・ペリコーリは、実はファブリスさんの弟。彼らが日々使う食器は、ほとんどがアスティエ・ド・ヴィラットのものです。

家族から受け継いだものと旅で見つけてきたものがミックスされたシュミネ(暖炉)の周りに置かれている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

家族から受け継いだものと旅で見つけてきたものがミックスされたシュミネ(暖炉)の周りに置かれている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

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日本で人気のアスティエ・ド・ヴィラットの食器をこんなにたくさん持っているなんて贅沢です(写真撮影/Manabu Matsunaga)

日本で人気のアスティエ・ド・ヴィラットの食器をこんなにたくさん持っているなんて贅沢です(写真撮影/Manabu Matsunaga)

旅で出会ったオブジェだけでなく、家族代々受け継いできた家具を飾り、家族のつくった食器で食事をし、家族がモデルになったオリジナルプリントも飾る。それがマン・レイのオリジナルプリントだったり、家族の食器がアスティエ・ド・ヴィラットだったり。それでもお二人にとってはとても身近な物。
ファミリーを大切にし、好きなものしか所有しない、という信念のもとで自分たちのスタイルをつくり上げる。これは新しいボヘミアンのスタイルかもしれません。

(文・松永麻衣子)

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170517_main.jpg

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“暖房をつけても寒い”は家に問題が! 解決策は「住まいの温活」

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“暖房をつけても寒い”は家に問題が! 解決策は「住まいの温活」

寒さが本格化するこの季節。思わず暖房をガンガン効かせたくなるけど、光熱費がかさむし、地球にも優しくない。そこで考えたいのが、住まいそのものを寒さから守ること。外の寒さを閉め出し、暖かさを逃さない家にする「住まいの温活」の方法について、断熱リフォームからDIYの方法まで、旭ファイバーグラス株式会社渉外技術担当部長の布井 洋二さんに話を聞いた。
暖房しても寒いのは、暖房の熱が外に逃げているから

冬、家の中を暖房しても寒いのは、なぜだろうか? それは、暖房の熱が外に逃げてしまうから。一戸建ての場合、暖房の熱は、窓などの開口部や外壁、床や屋根から失われてしまい、特に開口部からの流失は58%に上るというデータもある。せっかく暖房をつけても、窓や壁、床や屋根から、暖かさが逃げてしまうのだ。

では、どんな家なら、熱を外に逃さないのか。よく言われるのは、「家全体をくるむように断熱する」ということ。気密性を高め、隙間なく断熱することで、熱に逃げる隙を与えないのだ。そこで、開口部や壁、床、屋根など、外気に面していたり、土と接していたりする部分ごとに断熱を施すことになる。

すでに住んでいる家でも、断熱材を追加で施工したり、窓を替えたりする「断熱リフォーム」によって、断熱性能をアップすることは可能。一戸建て、マンションそれぞれについて、その方法を布井さんに聞いてみた。

冬、外気がマイナス2.6度のとき、18度に暖房した部屋から外に逃げていく熱の割合は、開口部(窓)が58%と最大。外壁や換気による流失が15%ずつあり、床や屋根からも熱が失われている(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会HPより転載)

冬、外気がマイナス2.6度のとき、18度に暖房した部屋から外に逃げていく熱の割合は、開口部(窓)が58%と最大。外壁や換気による流失が15%ずつあり、床や屋根からも熱が失われている(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会HPより転載)

2月の東京で、断熱材なしの一戸建てと断熱材100mmを施工した一戸建て(ともに窓は無断熱・単板ガラス)を設定20度で暖房した場合を比べると、断熱材なしのケースでは1日に逃げる熱の合計が断熱したときの約3倍だ(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会HPより転載)

2月の東京で、断熱材なしの一戸建てと断熱材100mmを施工した一戸建て(ともに窓は無断熱・単板ガラス)を設定20度で暖房した場合を比べると、断熱材なしのケースでは1日に逃げる熱の合計が断熱したときの約3倍だ(一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会HPより転載)

一戸建ての断熱リフォーム費は数十万円から数百万円程度に

まず、一戸建て。簡易な方法としては、1.最下階の床下に断熱材を施工する「床断熱」、2.天井裏から吹込み断熱施工を行う「天井断熱」、3.内側、あるいは外側から断熱材を施工する「壁断熱」、4.今の窓の内側に内窓を設置することによる「窓の断熱」、この4つの部位の断熱が挙げられる。

このうち、床(最下階床)、天井、壁(外壁)それぞれを断熱リフォームした場合の費用の目安は下図の試算例が参考になる。昭和55年省エネルギー基準世代の築25~20年前後、床面積135平米の一戸建ての場合、天井にグラスウールを吹込み断熱する「天井断熱」だと1棟36万円。最下階の床下にグラスウールを充填すると「床断熱」だと同101万円、外壁に外側から断熱材を張り付ける外張付加断熱工法による「壁断熱」だと同387万円となっている。

「壁の断熱については、内張断熱工法も。断熱材にもよりますが、1平米あたり2万~5万円ほどかかるようです。得られる断熱性能は今の省エネ基準以下となるケースが多いでしょう」(布井さん)

窓の断熱にかかる費用は、内側に設置する内窓次第。標準的な掃き出し窓の場合、一間分に複層ガラス(数枚の板ガラスの間に乾燥空気やガスなどが封入された窓)を取り付けると、材料費・工事費で6万円台。腰高窓の場合は、3万円台が目安となる(いずれも取り付けや進入に障害がなかった場合)。例えば、1階の掃き出し窓二間分と腰高窓二間分、2階の掃き出し窓二間分と腰高窓五間分に内窓を設置するなら、トータル約50万円という計算だ。

「さらに念入りに断熱するなら、部位ごとの断熱を組み合わせます。例えば、1階のLDKに床断熱と窓の断熱を、2階の寝室に天井と窓の断熱を施す、といった具合です。さらに大掛かりなものとなると、建具や仕上材をはがしてから行うスケルトンリフォームしかないと思われますが、廃棄物の処理を含めてかなりの高額に。規模にもよりますが、一戸建てを新築するよりも数百万円安いくらいの金額、つまり1000万円を超えるレベルでないと、工事を引き受けるリフォーム会社はないように思われます」(布井さん)

(出典:「住宅・すまいweb 環境とすまい・まち」断熱改修のすすめ・戸建住宅編 (社) 住宅生産団体連合会、(株)岩村アトリエ/一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会HPより転載)

(出典:「住宅・すまいweb 環境とすまい・まち」断熱改修のすすめ・戸建住宅編 (社)
住宅生産団体連合会、(株)岩村アトリエ/一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会HPより転載)

〈試算条件〉
築25~20年前後の住宅モデル
1982~1991年(昭和55年省エネルギー基準世代)
延床面積:135平米(1階:80平米 、2階:55平米 )
改修費用:平米単価(消費税別)および1棟あたりの費用(消費税込み)を算出
〈年代相応の断熱仕様(リフォーム前)〉
天井:グラスウール10K 50mm
外壁:グラスウール10K 50mm
開口部:アルミサッシ+単板ガラス
床:押出法ポリスチレンフォーム保温板1種 20mm
(*平成25年省エネ基準の6地域を想定)

高断熱住宅なら、エアコン1~2台で十分な暖かさが得られる

次に、マンション。簡易なやり方としては、一戸建てと同様、1.外に面している壁を内側から断熱する内張断熱工法による「壁断熱」、2.今の窓の内側に内窓を設置することによる「窓の断熱」がある。窓の断熱については、一戸建てと同程度と考えられるだろう。

「大掛かりな断熱リフォームは、大規模修繕と併せて実施するケースが多く、屋上断熱防水工事や、妻壁(建物の短い方の辺の壁)の外断熱改修などを、マンション全体で行うことになります」(布井さん)

なお、一戸建て・マンションのいずれのリフォームでも、床暖房を設置することは少なくない。床暖房の設置も、住まいの「温活」の手段となり得るだろうか?

「床暖房も一つの手段です。ただし、断熱性能や気密性能が十分でないと、効果は限定的。床の表面温度だけが上がっても、隙間から冷気流を感じたり、窓や壁の表面温度が低いままだと、冷放射を受けて寒く感じてしまうからです。また、床暖房の下側を断熱していないと、せっかくの熱が基礎や地盤面に奪われてしまい、非効率。光熱費もかさんでしまいます」(布井さん)

加えて、HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)が定める断熱性能基準「G2」、などの高断熱住宅で、冬季に昼間の日射が期待できる場合は、ごくわずかの暖房エネルギーでまかなえるので、床暖房がなくても十分温かいケースもあり得るとのこと。また、「G2」よりワンランク下の「G1」クラスや省エネ基準レベルの住宅の場合、エアコンを併用する形で床暖房を用いるケースも多いが、前述の「G2」以上の断熱性能があれば、容量の小さなエアコン1~2台だけ(床下エアコンも含む)あれば、床暖房がなくても十分なケースも多いそう。もちろん、プランや周りの状況によるということだが。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

リフォームしなくても手軽なDIYによる“セルフ温活”が可能

「断熱リフォームに効果があることは分かったけど、とてもそこまではできない」という場合は、ちょっとした工夫や自分でできるプチDIYを試してみよう。

「家の中で一番、熱の逃げ道となっている『窓』の対策が効果的です。例えば、緩衝材の『プチプチ』や、中空のポリカーボネート板を窓ガラスや窓枠の内側に張るといったやり方があります。ただし、見栄えが悪く、気密性の向上も望めないので、効果は限定的。気密性を高めるためには、パッキンなどの交換も効果がありますが、自分でやるのは難しいかもしれません」(布井さん)

カーテンを厚手のものや遮熱カーテンに替えるといった方法も。また、床にホットカーペットやラグを敷いたり、フローリングに薄手の畳を載せることでも、暖かさを体感できる。ドアの隙間に張る隙間テープで冷気流を防ぐこともできるが、この場合は、換気のためにドアの下の部分を欠き取る『アンダーカット』が施されていることもあるので要注意。手間や材料費、見た目の悪さなどのデメリットも検討した上で、効果的なやり方をぜひ上手に暮らしに取り入れたい。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

中空ポリカーボネート板や「プチプチ」は、ホームセンターなどで手に入る(写真/PIXTA)

中空ポリカーボネート板や「プチプチ」は、ホームセンターなどで手に入る(写真/PIXTA)

高断熱リフォームなら次世代ポイント制度の対象になる

これから住宅を購入しようという人なら、あらかじめ高断熱の住まいを選ぶのも「温活」のひとつかもしれない。

「日本では、高断熱住宅であることの公的な認定制度は、『BELS』や省エネ基準レベルの断熱性能が最高等級の『住宅性能表示』しかありません。ただ、外皮性能(室内から屋外に逃げる熱の量の合計を、外壁や屋根など外皮の面積で割って算出した値。UA値)の良さは、一つの目安にはなると思います。公的ではありませんが、HEAT20の『G1』『G2』や、ほぼ同じレベルの外皮性能の必要なZEHの『強化外皮基準』『更なる強化外皮基準』などが参考になるでしょう。また『BELS』では、『外皮基準』として外皮性能(UA値)の数値も表示されているので、その数値が自分の地域のHEAT20のG1・G2レベル相当かどうかを比較するのも良いでしょう」(布井さん)

2019年10月の消費税率引き上げに伴い、一定の省エネ性能を満たす住宅の新築やリフォームに対して、さまざまな商品と交換できるポイントを発行する「次世代住宅ポイント」制度もスタートしている。「長期優良住宅」「ZEH」などの認定住宅など一定の条件を満たした新築住宅を購入した場合に加えて、リフォームで「開口部の断熱改修」「外壁、屋根・天井または床の断熱改修」を行った場合も対象に。期限があるので、利用を希望するなら、早めの検討・着手が必要だ。

「温活」した高断熱住宅で得られる自然な暖かさ

「住まいの温活」は、家の中を暖かくて居心地の良い空間にするだけでなく、室内の温度差を解消してヒートショックを防いだり、光熱費が節約できたりといったメリットもあるし、夏の暑さも和らげてくれる。
「ただし、こうしたメリットを享受するには、断熱性だけでなく、気密性も高める必要があります。隙間があり、気密性の低い家は、まるで穴の空いたセーターや布団のようなものですから」(布井さん)。
だからこそ、断熱性とセットで気密性の高い住宅の暖かさは格別なのだという。
「HEAT20の『G2』クラス相当かそれ以上の家を訪れると、暖かさを実感するというよりも、ふんわりとした暖かさのおかげで、暖かさ自体を忘れてしまいます。高断熱の家とはそんな空間なのです」(布井さん)
 
布井さんは、HEAT20のサポート委員として、日本の住宅の方向性を示す取り組みにかかわっている。
「省エネ性能に優れた住宅の生産を促す『トップランナー』制度の対象拡大や、省エネ基準の説明の義務化により、これからは、省エネ基準が、最低限、満たすべきレベルとなりますが、このレベルだと、家の中で部分的に暖房を付けたり消したりする程度では、暖房していない空間はかなり低温になり、ヒートショックなどのリスクは残ります。一方、HEAT20の『G2』クラスの断熱性能を備えた住宅は、わずかな光熱費で全館暖房が可能になるので、家の中の温度差が小さく、健康的で快適な空間に。断熱リフォームを行うのであれば、ぜひ『G2』レベルを目指していただきたいですね」という布井さんのメッセージでこの記事を締めくくりたい。

●参考サイト
HEAT20(2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会)
次世代住宅ポイント元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/01/169871_main.jpg

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島根の高校への “地域留学”から東大へ。「田舎だからこそ得られたリアリティが僕の夢の源」

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島根の高校への “地域留学”から東大へ。「田舎だからこそ得られたリアリティが僕の夢の源」

都道府県の枠を超えて、全国の高校に進学する「地域みらい留学」というネットワークがある。都会にはない広大な自然、その地域特有の文化にふれながら、充実した3年間を送るというものだ。最近では、少人数教育、親元を離れての寮生活、独自のカリキュラムに魅せられ、都会から進学する生徒たちが増えている。
今回は、その制度を利用し、神奈川県の高校から島根県立津和野高校に再入学、卒業後は、東京大学に進学した鈴木元太さんにインタビュー。きっかけをはじめ、島根の3年間で彼が得たこと、未来につながる糧など、あれこれお話を伺った。

きっかけは「震災ボランティア」。地元の高校生たちに刺激を受ける

「この地域への留学を選んだきっかけは?」と聞かれれば、やはり高校1年のときの震災ボランティアだったと振り返る鈴木さん。「ここまで復興していないなんて」「まだまだ手付かずなんだ」とリアルな現場を目の当たりに。その後、何度も被災地に足を運んだ。
そんななか、最も印象的だったのは、同世代の高校生たちが、自分たちの街のために奮闘している姿だった。「例えば、高校生カフェをしたり、大阪の物産展で販売しようと地元の商品を自分たちで仕入れをしたり、街を舞台にファッションショーをしたり、街の大人たちを巻き込みながら行動している様子を見て、高校生でも地域や社会に働きかけることができるんだと思ったんです」
そうして「学校を休んで何度も被災地を訪れる生活」をしているうち、通っていた神奈川県の進学校での留年が決定。もう一度1年からやり始めるという選択もあったが、「大学受験のための高校生活にしたくない。もっと地域や社会にリアルに関わるような学びがしたい」と、「地域みらい留学」実践校である島根県の津和野高校に再入学した。

津和野高校のうしろには津和野城跡がある(画像提供/鈴木さん)

津和野高校のうしろには津和野城跡がある(画像提供/鈴木さん)

津和野町(画像提供/鈴木さん)

津和野町(画像提供/鈴木さん)

昨年、島根県立津和野高校卒業。現在東京大学1年生の鈴木元太さん。幼少期を北海道で過ごす。「島根への留学は僕の意思。両親は僕の選択を尊重し、応援してくれました」(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

昨年、島根県立津和野高校卒業。現在東京大学1年生の鈴木元太さん。幼少期を北海道で過ごす。「島根への留学は僕の意思。両親は僕の選択を尊重し、応援してくれました」(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

親や先生以外の大人が身近に。田舎だからこその距離感が新鮮

「前の高校と一番違うことは、とにかく関わる大人が多いこと」だった。
例えば、地域の人たちが先生役、指導役になって、高校生たちが興味を持ちそうなテーマで、より実践的に学べるカリキュラムを1年間通して設けている。そのコースは20以上。「例えばドローン入門だったり、津和野の建築や食だったり、空き店舗をなんとかしようだったり、何でもあり。今では、“T-プラン”と名付けられ、猫カフェやアイドル入門といったものもあります。生徒のほうから提案もできます」
津和野高校の1学年の生徒数は60人程度と少人数。地域の人たちと生徒たちがお互いに顔と名前が分かる環境で、交流を深めていく。大人と生徒との距離感がとても近いのが都会との大きな違いだ。

鈴木さんと一緒にいるのは高校魅力化コーディネーターの、通称「うっしー」こと、牛木さん(画像提供/鈴木さん)

鈴木さんと一緒にいるのは高校魅力化コーディネーターの、通称「うっしー」こと、牛木さん(画像提供/鈴木さん)

「竹林を守る」活動を通して得られた体験が、将来への座標に

鈴木さんが高校生活で積極的に取り組んだのが「竹林」だ。
まちに入り込んでフィールドワークをする地域系部活動「グローカルラボ」の一環として、地域の行事に参加して地域の人たちと顔見知りになったり、自分たちが借りた畑で作物を育てるために地元の農家さんたちの協力を得るなか、鈴木さんは「津和野では放置した竹林が増えており、景観や生態系に悪影響を及ぼす危険がある」ということを知る。「どうにかならないかなと思い、学校と地域を結ぶ高校魅力化コーディネーターにお願いし、竹林の持ち主の方や役場の方に会って、話を聞きました」

その後、たけのこを掘る企画を立ち上げたり、竹を割って器にしたタケノコご飯をしたり、小学生と竹馬をつくるワークショップをしたりと、「鈴木くんといえば竹」と高校でも一目置かれる存在になったそう。
「とにかく、”こんなことを考えているんだけど……”と相談したら、”だったら、この人に話を聞けばいいんじゃない。連絡してみよう”とか、“じゃあ、私が車を出そう”と、いろんな大人たちが協力してくれました。普通の高校生じゃ、なかなか会えないような人と話す機会が得られて、視野が広がりました。また、自分で考えて動けば、誰かが応えてくれる。竹には興味がない同級生も、ごはんづくりなら、と参加してくれたり、子ども好きな友人は小学生向けの教室を手伝ってくれたり、そのコミュニケーションの在り様がとても楽しかった。それはこれからのやりたいことにつながっています」

竹林保全活動の様子(画像提供/鈴木さん)

竹林保全活動の様子(画像提供/鈴木さん)

竹を器にしたタケノコご飯(画像提供/鈴木さん)

竹を器にしたタケノコご飯(画像提供/鈴木さん)

竹林保全の活動の報告会。中学生から80代の方まで幅広い年代の54名が集まり、これからの高校生と地域の大人の関わりを話し合った。鈴木さんの活動は津和野高校の1、2年生に引き継がれる(画像提供/鈴木さん)

竹林保全の活動の報告会。中学生から80代の方まで幅広い年代の54名が集まり、これからの高校生と地域の大人の関わりを話し合った。鈴木さんの活動は津和野高校の1、2年生に引き継がれる(画像提供/鈴木さん)

もし津和野に行かなかったら、今の自分はいなかった

「もっと地域に関わる学びをしたい」と、現在は、推薦入試で東京大学の理科1類(工学部建築学科に進学予定)に入学した鈴木さん。学力に加え、神奈川県の高校時代から続けてきた衛星を使った画像分析の研究(北海道大学と共同)、さらに津和野高校での竹林の保全活動が評価されたのだ。
「神奈川県で在籍していた高校は進学校で、僕は高校受験で燃え尽き症候群になってしまったんです。そのままそこで高校生活を続けて、学ぶモチベーションを保てたかどうか分かりません。当時の僕の将来のビジョンは“グローバルに働く”“サイエンスで問題を解決”など、どこかふわふわしたものでした。でも津和野での経験で、課題は目の前にあるし、それを解決していくには自分が動くべきだという意識が芽生えました。そこにあるのは圧倒的なリアリティでした」

現在は、かつての自分のような情報弱者の受験生をサポート

行動力、決断力、周囲の人を巻き込む人たらし力(?)のある鈴木さん。漠然と自分が進みたい道の輪郭がクリアになっていったものの、目の前にある“大学進学”に対しては不安で仕方がなかったそうだ。
「そもそも、津和野には、都会のような受験特化の進学塾はありません。四年制の大学の進学率も3~4割です。大学進学にはセンター試験対策の受験勉強も必要ですが、それを独学でするのは、正直、強い意志が必要でした。情報格差もあります」
そうした不安を持っていた鈴木さんは、東京大学ではいわゆる非進学校出身のメンバーによるサークルUTFRに加入。過疎地の高校生に対し、情報提供や進学サポートをする活動を行っている。取材日の週末も、友人の大学生たちと津和野に帰り、母校を訪問、ワークショップを開く予定だ。
「都会では当たり前なことが田舎では難しいことは多々あります。でも、地元の人たちは気づいていないだけで、田舎だからこその強みもたくさんありますから」
自ら考え、自ら行動する。津和野で培った行動原理を卒業後も実践し続ける鈴木さん。今後の活躍が楽しみだ。

「卒業後も津和野に関わり続けたい」。その鈴木さんの想いを形にした在校生対象のワークショップ(写真提供/鈴木さん)

「卒業後も津和野に関わり続けたい」。その鈴木さんの想いを形にした在校生対象のワークショップ(写真提供/鈴木さん)

次回は、この「地域みらい留学」を主宰する一般財団法人「地域・教育魅力化プラットフォーム」に取材。立ち上げの背景、現状と今後の展開について話を伺う予定だ。

●取材協力
鈴木 元太さん
>note
>鈴木さんの事例が掲載されている新刊『非進学校出身東大生が高校時代にしてたこと』(太田 あや 著、UTFR 監修、小学館 刊) 2020/2/26発売元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170576_main.jpg

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「コミューンときわ」で地域に根ざす自分らしい暮らし。新築賃貸でもDIY可能!

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「コミューンときわ」での地域に根ざす自分らしい暮らし。新築賃貸でもDIY可能!

多世代の交流を育み、地域に開かれた“コミュニティ賃貸”として、オーナーの浦和への想いを形にした「コミューンときわ」。中庭が人々の暮らしを繋ぎ、また、令和生まれの新築でも住戸のDIYが可能というのも特徴だ。2020年2月に開かれたお披露目会に参加し、オーナーや入居者に話を伺った。
コンセプトは「夢ある人が集い、コミュニティをつくり、地域と共生する」

JR京浜東北線「北浦和」駅から徒歩10分ほど。活気ある「北浦和西口商店街(ふれあい通り)」を抜けた先の住宅街に「コミューンときわ」は立地している。道路沿いには、NPO法人クッキープロジェクトが運営するカフェや、ガラス張りで街に開かれたSOHO型の住まいが並び、道行く人々の目を引く。

自然にコミュニティが形づくられていくよう、コミュニティデザインを「まめくらし」が監修。「まめくらし」は、「青豆ハウス」や「高円寺アパートメント」など街に開かれた賃貸を手がけてきた会社だ。代表取締役の青木純さんが「子どもだけでなく親も一緒に来られるために目的を限定しない場所を」とアドバイスした中庭をはじめ、ラウンジや水回り常設の屋上菜園など、住民同士の交流やくつろぎの場となる共用部が充実。日々どこかしらで井戸端会議が開かれそうだ。

運営もしっかり考えられている。“ご近所づきあいに興味があって入居しても、どうすればいいか分からない”という住人が出ないよう、平日は、住人同士の間をつなぐ「コミューン・パートナー」が常駐。日常の関係性づくりやより暮らしを楽しむサポートをしてくれる。

芝生が敷かれた中庭。住民が多目的に使用できるほか、イベントスペースとしても運営予定だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

芝生が敷かれた中庭。住民が多目的に使用できるほか、イベントスペースとしても運営予定だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

ヨーロッパで多く見受けられる中庭を持つ集合住宅。「コミューンときわ」が異なるのは、中庭に面しているのが窓ではなく共用廊下で、アクションを取りやすいことだ。玄関と中庭が接しているため、買い物に出る際に中庭での会話や遊びに参加したり、中庭で会話が弾んだ流れで誰かの家に移動したりと、自然と交流が生まれそうなこのつくりは、長屋のような雰囲気を感じる。

家賃は周辺相場よりもやや高めの設定だ。それでも、多世帯交流などから生まれる豊かなライフスタイルが、「コミューンときわ」ならではの価値につながっていくことだろう。

浦和の文化と人とをつないで地域活性へ

コミュニティづくりは「コミューンときわ」内にとどまらず、地域とも連携していきたいと、オーナーである株式会社エステート常盤・代表取締役の船本義之さんは言う。「commune」はフランス語で共同体という意味。オーナーである株式会社エステート常盤・代表取締役の船本義之さんの「豊かな暮らしを育み、ひとつの街のようなつながりをつくりたい」という想いから名付けられた。

名曲『神田川』の時代から、分譲の住まい自体の質は高くなってはいるものの、賃貸物件をめぐる環境づくりやあり方が時代に追いついていないと感じていた船本さん。賃貸というものの形態は、ライフテージの変化に合わせて暮らしやすいからこそ、もっといい住環境を提供したいと、入居者同士がつながったり、部屋を自分らしくアレンジしたりできるようにした。

お披露目会の様子(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会の様子(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

浦和は「鎌倉文士に浦和画家」と称され、古くから文化が根付く街。浦和で20年ほど暮らしてきた船本さんは、「浦和にはいろいろな活動をしている人がいて、文化的なポテンシャルが高い人も多く住んでいる。しかしみんな皆、東京を見ていて、横のつながりがない」と感じていた。周りに多彩な人がいることを知る機会があれば、暮らしがもっと豊かになり、地域が活性化するのではないかと、多世代や地域の交流の場として「コミューンときわ」を計画。文化が産業の“人里資本主義”を掲げ、浦和が持つ人材のネストを目指している。

船本さんは、入居希望者全員と面接を行い、コミュニティづくりへの想いを共有していくという。プライバシーとコミュニティとのバランスをとりながら「ドアに鍵をかけなくてもいいような関係性が築かれていけば」と「コミューンときわ」のこれからに期待を寄せる。

セミオーダーから一点モノへ、サポートを受けながら自分好みの空間に

「コミューンときわ」には、多世代が暮らせるよう、1Rから2LDK、SOHO型まで幅広い55戸の住戸が用意されている。どの住戸も窓が大きく、オープンなつくりで開放的だ。そして特徴的なのが、各住戸の表情が異なること。

内装は空間デザイン会社の夏水組がトータルコーディネートを行った。それぞれ「Urban Vintage(アーバンヴィンテージ)」「Innocent Green(イノセントグリーン)」「Ellison Natural(エリソンナチュラル)」「Casual Taste(カジュアルテイスト)」の4つのテイストが用意されている。

「Ellison Natural(エリソンナチュラル)」の内装で、一人暮らしを想定した住戸(28.12平米)。1階は専用庭付き(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「Ellison Natural(エリソンナチュラル)」の内装で、一人暮らしを想定した住戸(28.12平米)。1階は専用庭付き(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「Urban Vintage(アーバンヴィンテージ)」の内装で、土間が大きく取られたカップル/ファミリー向け住戸(55.08平米)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「Urban Vintage(アーバンヴィンテージ)」の内装で、土間が大きく取られたカップル/ファミリー向け住戸(55.08平米)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

共用廊下に面した開口が広いのがコミュニティ賃貸ならでは(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

共用廊下に面した開口が広いのがコミュニティ賃貸ならでは(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

クロスやタイルはデザイン性の高いものから好みの柄を選ぶことができる。ヘリンボーンの床などPanasonicの建材を使用(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

クロスやタイルはデザイン性の高いものから好みの柄を選ぶことができる。ヘリンボーンの床などPanasonicの建材を使用(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

選択肢が多いことは、入居者にとってうれしい一方、オーナー視点では施工コストがかさみ、デメリットになりそうだ。夏水組・代表取締役の坂田夏水さんに伺うと「建具や壁紙などモノのコストは変わらず、増えるのは現場管理コストのみ」だそう。その分、夏水組が見積もりを判断し、VE(バリューエンジニアリング=機能を維持しつつ、コストを削減すること)につなげたという。

参考として展示された夏水組セレクションの壁紙のバリエーション。好みの柄を張ってカスタマイズできる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

参考として展示された夏水組セレクションの壁紙のバリエーション。好みの柄を張ってカスタマイズできる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会に出店した「Decor Interior Tokyo」。この日は、夏水組デザインのタイルや、ニトムズのインテリアマスキングテープなど売れ筋アイテムをそろえた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会に出店した「Decor Interior Tokyo」。この日は、夏水組デザインのタイルや、ニトムズのインテリアマスキングテープなど売れ筋アイテムをそろえた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

インテリア好きな入居者にとってうれしいのが、夏水組がプロデュースするインテリアショップ「Decor Interior Tokyo」と連携していること。幅広い商品の中から、壁紙やDIYアイテムをスタッフと一緒に選んでもらったり、施工のアドバイスを受けたりすることができるのは心強い。

未知数の「コミューンときわ」入居の決め手は「単純におもしろそう」

お披露目会では、さっそくお手伝いをする入居者の姿があった。「北浦和」駅の近くにあるクラフトビールバー「BEER HUNTING URAWA」オーナーの小林健太さんは、自慢のビールで来客をおもてなし。小林さんが参加する浦和の街をおもしろくしようという活動で開いた「うらわ横串ミーティング」での船本さんや青木さんとのトークイベントをきっかけに「コミューンときわ」に興味を持った。

入居の理由を尋ねると「単純に、おもしろそうだから」と小林さん。このシンプルな答えこそが、“まだよく分からないけど、とにかくおもしろそうな何かが生まれそう”という「コミューンときわ」の魅力を物語っている。

直井薫子さんと小林健太さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

直井薫子さんと小林健太さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会の看板を描いていたのは、「コミューンときわ」のSOHO型住宅でデザインオフィスを構え、職住近接を実践する直井薫子さん。東日本大震災をきっかけに、地元である埼玉のことを考えるようになり、東京から引越してきた。

以前住んでいた東京・葛飾では、ローカルメディアに携わるなど、地域に対してデザインができることは何かを考え、実践してきた。「埼玉でデザイナーといえば直井と言われるように」と、地域に根ざしたデザイナーを目指している。入居して間もないが、すでに映画のイベントを企画。今後は本屋のイベントや、アートやデザインに関連したコミュニティづくりを行っていきたいと語ってくれた。

笑顔が素敵なこのお二人と仲良くなれるだけでも、入居する価値を感じる。ハード面だけでなく、住人やそこから生まれるつながりが核となり、コミュニティの輪が広がっていくことだろう。

直井さんが、お披露目会の看板を描く様子。「コミューンときわ」には入居者それぞれが得意分野を活かせる場がある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

直井さんが、お披露目会の看板を描く様子。「コミューンときわ」には入居者それぞれが得意分野を活かせる場がある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

住人同士や地域とのコミュニティづくり、そして部屋のアレンジやのサポート体制が整ったマンション。近年、自分らしい住まいを手に入れようと思ったら、物件を購入してリノベーションをするのが流行りのように思われるが、この新しい賃貸物件では、気軽に住み方のバリエーションを広げられる。

時間を掛けて、じっくり街がつくりあげられていく「コミューンときわ」。興味を持ったら、現地を訪れてみてはいかがだろうか。

●取材協力
・コミューンときわ
・株式会社夏水組
・株式会社まめくらし元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170616_main.jpg

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三大都市圏で1000万人を超えるという「関係人口」ってなんだ?

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三大都市圏で1000万人を超えるという「関係人口」ってなんだ?

最近時々耳にする「関係人口」。移住でも観光でもなく、日常生活圏や通勤圏以外の特定の地域と継続的かつ多様な関わりを持つ人たちのことだ。その実態は、十分に把握されていなかったが、国土交通省が三大都市圏の関係人口について実態調査を行った結果、18歳以上の居住者の23.2%に当たる約1080万人(推計値)が特定の地域を訪問している関係人口だという。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「地域との関わりについてのアンケート」調査結果を公表/国土交通省地域産品の購入や趣味の満喫、地域の人との交流などのために特定地域を訪れる人たち

あなたは「関係人口」についてご存じだろうか?よく分からないという人が多いだろう。
この調査でも、「特に聞いたこともないし、よくわからない」という回答が73.2%もおり、4人に3人は分かっていないことになる。

日常生活圏や通勤圏以外の地域に、移住したり(定住人口)、観光したり(交流人口)するのではなく、何らかの形でかかわっている「関係人口」は、三大都市圏居住者のうちの24.1%いることが実態調査で分かった。うち、1.9%は「ふるさと納税」などでその地域を訪問しないで関わっていて、残りの23.2%がその地域を訪問している。

国土交通省では、特定の地域に“訪問して”関わっている人を「関係人口(訪問系)」と呼び、さらにその地域での過ごし方によって、次の4つに分類している。
■関係人口(訪問系)の定義
日常生活圏、通勤圏、業務上の支社・営業所訪問等以外に定期的・継続的に関わりがある地域があり、かつ、訪問している人(地縁・血縁先の訪問(帰省を含む)を主な目的としている人を除く)
■関係人口(訪問系)の大分類
【直接寄与型】(3.0%):産業の創出、地域づくりプロジェクトの企画・運営、協力、地域づくり・ボランティア活動への参加等
【就労型】(3.9%):地域においてテレワークや副業の実施、地元企業等における労働、農林水産業への従事
【参加・交流型】(5.8%):地域の人との交流やイベント、体験プログラム等に参加
【趣味・消費型】(10.5%):地縁・血縁先以外で、地域での飲食や趣味活動等を実施(他の活動をしていない)

具体的に特定の地域でどのような関わり方をしているかというと、「地域ならではの飲食や買い物(地場産品の購入など)」、「自分の趣味や地域の環境を楽しむ」活動を行う人が多く、次いで、「地域の人との交流や人脈づくり」、「祭りや地域体験プログラム」への参加をしている人が多い。

関係人口(訪問系)は関わり先でどう過ごしているのか(出典:「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)を掲載した資料より転載)

関係人口(訪問系)は関わり先でどう過ごしているのか(出典:「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)を掲載した資料より転載)

地縁のある地域や好印象を感じる特定地域に、年に1回以上短期間で継続的に訪問

関わり先に訪問する頻度を見ると、「年に1回程度~数回」という人が多いのだが、「就労型」や「直接寄与型」では、「月に数回」や「月に10回以上」などが多いのが特徴だ。

関係人口(訪問系)の関係先への訪問頻度(出典:「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)を掲載した資料より転載)

関係人口(訪問系)の関係先への訪問頻度(出典:「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)を掲載した資料より転載)

関係先での滞在期間については、半日や丸一日の「日帰り」や「1泊2日程度」が多く、長くても「2~4日泊程度」といった結果になっている。

では、継続的に関わりを持つ特定の地域を訪問するようになったきっかけは、どういったことなのだろう?

かつて居住したり通学通勤したことがあったり、仕事で訪れたことがあったり、親戚や知人が住んでいたり、観光などで訪れたりなど、やはり「地縁や血縁がある地域」である場合が多い。一方で、その地域に憧れがあったり、何らかのツールで得た情報で興味が湧いたりといった、興味や好感など情緒的な動機付けによる場合もあった。

関係人口(訪問系)が地域を訪問したきっかけ(出典:「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)を掲載した資料より転載)

関係人口(訪問系)が地域を訪問したきっかけ(出典:「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)を掲載した資料より転載)

政府は、関係人口を増やして地域の活性化につなげたい

政府が関係人口に力を入れる背景には、地方圏で人口減少・高齢化によって、地域づくりの担い手不足という課題に直面していることがある。地域によっては、地域外から変化を生み出す多様な人材が入っている事例もあり、「関係人口」を増やすことで地域づくりに参画する人材を生み出すことを期待している。

そのため、総務省では関係人口を創出する地方公共団体の事業を支援する取り組みをしており、「関係人口ポータルサイト」をつくって普及に努めている。

ちなみに、筆者は居住している自治体の姉妹都市にふるさと納税をする形で、特定地域と関わってる。が、特定地域を継続的に訪問することはしていない。もっぱら一度も行ったことがない地域に観光目的で訪問している。ただ、筆者が大好きな浮世絵師・葛飾北斎と深く関わりのある長野県小布施町で、地域活性化に関わる人に会い興味を覚えた。北斎の足跡を訪ねて小布施に通う、ということも面白いなと思い始めている。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170722_main.jpg住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

テレワークが変えた暮らし[7] 湘南でマリンスポーツ&子育て。仕事の効率もアップ!

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テレワークが変えた暮らし[7] 湘南でマリンスポーツ&子育て。仕事の効率もアップ!

“自分の人生で通勤ほどムダな時間はない”。そう考えて、職住近接の都心暮らしから、現在は湘南暮らしのテレワーカー(リモートワーカー)となった勝見彩乃さん。
現在は、1歳児のママでもある勝見さんに、その経緯、子育てと仕事の両立、生活の変化など、テレワーク(リモートワーク)だからこそ実現した暮らしについてお話を伺った。
結婚を機に働き方を見つめなおす。その結果が「テレワーク」だった

テレワーク歴3年の勝見さん。夫も別会社のテレワーカーだ。
もともと「通勤時間はなるべく短く」がモットーで、常に都心暮らし。職場も住まいも新橋で、歩いて通勤という時期もあったそう。「地方出身で、大学もつくば。いつも交通手段は自転車か車だったので、満員電車が苦手なんです」
テレワークを決めたきっかけは、結婚。プライベートを充実させたい。仕事のパフォーマンスは上げたい。それを両立させるため、夫婦で話し合った結果だった。「結婚すると、今後のキャリアとかライフスタイルとかについて考えるじゃないですか。自分のキャリアを形成していくうえで、効率的に成果を出すのに一番邪魔で削りやすいものってなんだろう、それは通勤時間じゃない? だったら、リモートで働くのが一番じゃないかって結論になったんです」
そこで、転職活動はテレワークをできることが第一条件。結果、「リモートワークを当たり前にする」をミッションとし全メンバーがテレワーカーという企業「キャスター」に出会う。
転職後は、企業の一員として人事や広報を統括する業務に携わる傍ら、副業でスタートアップ企業のための採用サポートにも関わっている。夫もほぼ同時期に転職し、エンジニアとして会社に所属しつつ、フリーランスで業務を請け負うテレワーカーになった。

勝見彩乃さん(35歳)。大学3年生のときにインターンをしていた、求人メディアのベンチャー企業に卒業後就職。その後、ソフトウェア、インターネットメディア企業などで、主に人事・採用に携わる(写真撮影/片山貴博)

勝見彩乃さん(35歳)。大学3年生のときにインターンをしていた、求人メディアのベンチャー企業に卒業後就職。その後、ソフトウェア、インターネットメディア企業などで、主に人事・採用に携わる(写真撮影/片山貴博)

海の近くにマンション購入。一部をおうちオフィスに

テレワーク当初は、中央区晴海在住。もともと、前の職場に30分以内で通えることを理由に選んだ都心エリアだ。「ただ、リモートで働くなら、高い家賃を払ってまで東京都心にこだわる理由はないし、もっと自由に住む場所を選びたいと思うようになりました。家賃がもったいないし、資産としてマイホームを買うきっかけにもなりました」
購入したのは、湘南エリアの新築マンション。「夫婦ともサーフィンやSUP(スタンドアップパドル)
などマリンスポーツが好き。海へ気軽に行ける立地は魅力でした。また、フルリモートとはいえ、週に1度は東京都内に足を運ぶ業務もあるので、通勤圏でもある、このあたりが現実的でした」
新居を構えると、一部屋は夫の書斎に。リビングには作業用デスクをオーダーし、キッチンカウンター下はホワイトボードを張るなど、おうちオフィス仕様とした。

作業デスク、チェアはハンドメイドやクラフト作品のマーケットサイト『minne』で見つけたお気に入り作家さんにオーダー(写真撮影/片山貴博)

作業デスク、チェアはハンドメイドやクラフト作品のマーケットサイト『minne』で見つけたお気に入り作家さんにオーダー(写真撮影/片山貴博)

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キッチン下のカウンターにはシール式のホワイトボードを貼って、自分の考えをまとめる場に。「書く場所の広さは思考の広がりに比例すると思って、できるだけ広く取りたかったんです」(写真撮影/片山貴博)

キッチン下のカウンターにはシール式のホワイトボードを貼って、自分の考えをまとめる場に。「書く場所の広さは思考の広がりに比例すると思って、できるだけ広く取りたかったんです」(写真撮影/片山貴博)

辻堂西海岸にある自転車・SUP専門店「FAVUS」でのツーリングに参加した1コマ。江の島もすぐ。「マンションの屋上からは海が見えます」(写真提供/FAVUS)

辻堂西海岸にある自転車・SUP専門店「FAVUS」でのツーリングに参加した1コマ。江の島もすぐ。「マンションの屋上からは海が見えます」(写真提供/FAVUS)

ママになって、テレワークのメリットを再確認

そしてマンションの契約後、引越し前のタイミングで妊娠が判明、出産。「リモートワークは、育児を想定した選択ではありませんでしたが、限られた時間のなか、子どもとの時間を捻出するのは、通勤時間がないリモートワークが理にかなっています」
実は「なるべく仕事のブランクをつくりたくない」と、子どもが生後4カ月のときには仕事復帰。保育園の4月入園までの半年間は、自宅で育児をしながらのテレワークだったそう。「とはいえ、子どもが寝ている間など合間の時間を見つけて、1日4時間程度でしたけれど。本格復帰の前に育児しながらの仕事に覚悟をちゃんと持っておきたかったんです」
Web会議などまとまった時間が必要な場合は、会社から月3万円を上限にベビーシッター費の半額を助成してもらえる制度があり、そちらも活用することも。「プロの手を借りる。これは良かったです。私も育児に本当に慣れない時期で、”こうやって楽しませるんだ”とか、“こんなふうに刺激を与えて泣き止ませるのね”と、プロの技を教えもらったのは、とても心強かったです」
また、夫は育児休暇を取ったわけでないが、自宅でテレワークをしていたため、否応なく育児の当事者に。新生児時期の大変な時期の新米ママの伴走者でもいてくれた。「『僕がお世話しているから、寝ていたら?』と声をかけてくれたり、体力的にも精神的にも心強かったです。育児とテレワークは父親にも母親にもプラスばかり。小泉進次郎さんが育休を取って、テレワークをするということにも注目しています」

現在は子どもを近くの保育園に預けて、帰宅したら、朝の8時半には仕事開始。17時に子どもを迎えに行って、食事、お風呂をすませ、子どもを寝かしつけた21時から、また仕事をすることも。「子どもと一緒に寝落ちしてしまうこともあります(笑)」

1歳7カ月の娘さんと。「発熱などでお迎えの電話があっても、在宅なのですぐに迎えに行けます」(写真撮影/片山貴博)

1歳7カ月の娘さんと。「発熱などでお迎えの電話があっても、在宅なのですぐに迎えに行けます」(写真撮影/片山貴博)

組織の一員だからこそ実現できることもある

とはいえ、もっと仕事の自由度を上げるなら、「フリーランス」や「自分で独立してビジネス立ち上げ」という選択もあるのでは?
「もちろん、先のことは分かりませんが、今は会社の中で、自分がやりたいことを実現できていると思うので完全フリーランスは考えていません。同じミッションを共有している仲間がいることは心強いし、きっと会社が好きなんですよね(笑)。また、1人でできることには限られているし、組織だからこそ実現できることも多いでしょう。組織なら、経験がないことでも挑戦させてもらえる余地があります」
とはいえ、テレワークはフリーランス同様、過程ではなく成果で評価されるため、シビアさもある。誰でもテレワーカーになれるのだろうか?
「私も普通の会社員でしたよ。ただ成果を重視する働き方にコミットできる人、ある程度オンラインでのツールを使いこなせることは必要かと思います」 

ワーケーションも実践。プライベートもぐっと自由に

Web上のコミュニケーションに慣れるにつれ、プライベートにも変化が。
「今いる場所にこだわらなくなり、沖縄やアメリカにいる友人とZoom(Web会議室)でおしゃべりしたり、新しい仕事の相談に乗ってもらったり。会社の同僚ともオンラインランチ、オンライン飲み会と称して、つながっています」

社内に「オンライン飲み会部」という部活があり、ZoomというWeb会議ツールを使って不定期で飲み会を実施している これは2020年1月に実施した際に撮影したスクリーンショット(写真提供/本人)

社内に「オンライン飲み会部」という部活があり、ZoomというWeb会議ツールを使って不定期で飲み会を実施している これは2020年1月に実施した際に撮影したスクリーンショット(写真提供/本人)

旅行しながら仕事をする「ワーケーション」も実践済みだ。訪れた場所は、奄美大島、北海道、五島列島など。特に五島列島では自治体主催のプログラムに参加。土・日は家族で観光、月・火は子どもを地域の保育園に預けて、ホテルのコワーキングスペースで仕事をした。「これなら旅行のハードルがぐっと下がるでしょう。とても楽しかったです」

五島列島での風景。オフシーズンにリモートワーカーを招く取り組みで、参加費にタクシーチケットが含まれるので、運転免許を持っていない方でもOK (写真提供/一般社団法人 みつめる旅)

五島列島での風景。オフシーズンにリモートワーカーを招く取り組みで、参加費にタクシーチケットが含まれるので、運転免許を持っていない方でもOK (写真提供/一般社団法人 みつめる旅)

茨城県水戸市を中心に1カ月ほどワーケーションをしたことも。「日立駅にある海の見えるカフェで仕事をしていました」

茨城県水戸市を中心に1カ月ほどワーケーションをしたことも。「日立駅にある海の見えるカフェで仕事をしていました」

世の中には、あくまでも人対人の対面のやり取りにこだわりたい人がいるのも事実だ。しかし、技術の進化、副業の奨励などに伴い、暮らす街、働き方は今後もっと自由になるだろう。夫婦ともテレワーカー、フリーランスと会社員の二足のわらじ、という勝見さんは、まさにその実現者。「仕事する場所を選ばないなら、どこに住んだっていい。もっと田舎でも、海外でも。二拠点もありです」と、将来の選択肢は広がる一方。これからが楽しみだ。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/02/170665_main.jpg

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