
「ディスポーザー標準装備」。新築マンションの広告やチラシなどを見ていると、こうしたコピーを目にすることも多いはず。でも、ディスポーザーって本当のところ、便利なのだろうか。日本ではなかなか認知されていないようだが、その背景とは? 自身も愛用しているという、住宅リフォームコンサルタント・Yuuさんに話を聞いた。
生ごみ処理の憂うつから解放してくれるディスポーザー
家庭で生ごみ処理といえば、三角コーナーにネットを張って、そこへ捨てていくことが一般的。でも、掃除を少しでも怠るとヌメヌメしたり、臭ったり。そもそもネットの交換だって手間だ。ディスポーザーは、こうした生ごみの処理をぐっと軽減してくれる設備だという。まずは、その仕組みからYuuさんに解説してもらおう。
「ディスポーザーとは、排水口にとりつけて、生ごみを粉砕し、汚水といっしょに下水管に流す装置のことです。マンション特有の設備というわけではなく、一戸建てでも取り付け可能。リフォームでとりつけているご家庭もありますよ」と話す。
使い方も簡単で、シンクの排水口にある「生ごみ投入口」に生ごみを入れて、フタをして軽くひねるだけ。そのため、生ごみ用の三角コーナーは不要になり、梅雨でも排水口のヌメヌメやカビに悩まされることがないという。
「私自身も使用していますが、とても便利です。設置されているお宅は、満足度はすごく高いですね。多いのが食生活の変化で、“ディスポーザーのおかげで、お魚を食べるようになった”とよく聞きます」という。確かに筆者が取材でおじゃまする新築マンションのお宅でも、「一番、満足している」「想像以上に便利」という声はよく聞く。
というのも、最近では、住宅の気密性があがっているため、室内に生ごみがあると、どうしてもニオイが気になる。特に、魚の骨や内臓などがあると強烈に臭うため敬遠されるが、ディスポーザーがあると、こうした生ごみ問題を気にせず、いつでも魚を食べるようになるのだとか。
ただ、処理できないものやデメリットもある。
「アジやサンマなどの骨なら問題ありませんが、動物の骨(鳥や豚の骨)、貝殻などは粉砕できません。長ネギや玉ねぎなどの皮も、空回りしてしまうのでNGです。デメリットは掃除がしにくいことと、夏場に少しニオイが発生することでしょうか。氷やレモンを入れてまわす、洗剤をかけるといった対処法がありますが、どうしても防ぎきれないですね」とYuuさん。一戸建てで設置する場合、米びつ程度のスペースが必要になるので、こちらも注意が必要だ。
半数の自治体がディスポーザーの設置を自粛要請? その理由とはとはいえ、「ディスポーザー」と聞いて、すぐに思い浮かぶ人は多くないはず。というのも、ディスポーザーの普及率は、日本では数%程度。実は地方自治体の約半数がディスポーザーの設置を自粛してくださいと要請しているのだ。
ディスポーザーには、粉砕したごみを直接、下水といっしょに流す「単体型」と、敷地内にある浄化槽などで生ごみをとりのぞき、汚水のみを流す「環境配慮型」の2種類があるのだが、前者の「単体型」は、粉砕したとはいえ生ゴミを下水道管に垂れ流すタイプのため、下水道管のつまりや破損を招きかねず、各自治体が自粛要請をしているのだという。
近年の新築マンションで導入されているのは後者の「環境配慮型」で、このタイプであれば、環境や下水道管への負荷も軽減されており、自治体も難色を示すことはないという。
ちなみに、ディスポーザーに関しては世界の国々でも判断が分かれているそう。
「国交省の調査によると、アメリカではディスポーザーは普及していますが、ドイツでは禁止されているそうなんです」とYuuさん。背景には水資源の問題や人口密度、下水管のメンテナンス、ごみ処理などなど、各国の状況や環境に対する価値観の違いがあるそうで、こちらも興味深い。
「近年では、一戸建てでも環境配慮型ディスポーザーが登場しています。費用は20〜30万円程度で、シンク下に米びつ程度のスペースがあれば設置できます。設置の工事はとてもかんたんです。ただ、行政への各種手続きが必要で、例えば横浜市では、基準に適合したディスポーザーでないといけませんし、工事前に排水設備計画確認申請書を土木事務所に提出する必要があります。また、入居後も定期点検・清掃を行わなくてはいけません」とYuuさんはいう。こうした手間に加えて、日本の大手メーカーがディスポーザー製造を行っていないのも、なかなか普及しない要因になっているのかもしれない。
家庭からでる可燃ごみのうち、実は約2〜4割は生ごみだという(自治体の統計によって異なる)。一方で環境配慮型のディスポーザーのなかには、生ごみをもとに「堆肥」として再利用できるものもあり、リサイクルという意味でも有効だ(もちろん、ごみとして捨ててもよい)。
自治体は生ごみ処理費用が削減でき、家庭ではごみ処理がラクになるし、一石二鳥のディスポーザー。今後、環境問題への取り組みとして、家庭のごみ処理がクローズアップされる、もしくはエコ補助金などが出ると、ぐっと普及していくかもしれない。
●取材協力・住宅リフォームコンサルタント Yuu元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/03/106821_main.jpg
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