
日本には「有田焼」や「備前焼」といった有名な焼き物が数多くあります。それぞれの地域によって独自のデザインや色味などの特徴を継承していますが、茨城に「笠間焼」という“特徴がないことが特徴”の焼き物があるといいます。いったいどんな焼き物なのかを探るべく、現地を訪れました。
笠間焼ギャラリーロードへ
東京からおよそ2時間、茨城県中部に位置する笠間市は、栃木の益子町とともに関東の二大陶器産地として知られています。笠間駅から20分程度歩いた場所には、焼き物の工房やショップが立ち並ぶギャラリーロードがあります。

【画像1】約300人の陶芸家や窯元がいるといわれる笠間市。毎年4月29日から5月5日に開催される、笠間焼をメインにした陶器イベント「陶炎祭」には全国から多くの人が訪れる(写真撮影:末吉陽子)
今回訪れたのは、笠間焼作家の作品を中心に展示販売しているセレクトショップ「回廊ギャラリー 門」。モダンな蔵と屋敷のイメージを融合させた建物内には、いたるところに作品がディスプレイされています。

【画像2】中庭に面した回廊に置かれた焼き物は、どれも素敵なものばかり(写真撮影:末吉陽子)
器だけでなく置物のデザインも豊富では、どんな作品が置かれているのか見ていきましょう。

【画像3】素朴な風合いの壺や花瓶は、王道の陶器といった雰囲気で風格十分(写真撮影:末吉陽子)

【画像4】かと思えば、こちらはなんとも斬新なデザインの作品。茨城県のデザインセレクションにも選ばれているプリーツワークの花器(写真撮影:末吉陽子)

【画像5】一瞬何に使うか迷いそうなこちらの器は、日本酒を入れて片口としても使えるデザインの入れ物。シンプルな色合いながら、フォルムへの飽くなきこだわりがひしひしと伝わってくる(写真撮影:末吉陽子)
このように、さまざまな作風がみられる笠間焼。かなり振り幅が大きいように感じられます。というのも、笠間焼は「笠間の地で焼く」ということ以外、デザインや色味に縛りはなく、“特徴がないことが特徴”ともいわれています。
自由度の高さを奨励したことで注目の陶器産地に江戸時代に誕生した笠間焼は厨房で使われる生活雑器の生産地として一躍有名に。戦後、生活様式の変化により存続の危機を迎えますが、昭和25年には茨城県窯業指導所が設けられ、工芸陶器に方向転換。作家の個性に重きをおいた作品づくりを指導する場をつくったことで、全国的に注目される産地として復活を果たしたそう。
じっさい、その自由度の高さにひかれて笠間にやってくる若手作家も少なくないとか。個々が才能のおもむくままにクリエイティビティを発揮できる、じつに懐の深い産地といえます。特徴がないというのは決して“没個性”とイコールではなく、逆にエッジの立った作風やデザインが続々と生まれたことで、笠間焼ならではの魅力を育んできたのかもしれません。

【画像6】ふくよかな身体つきとリアルな質感のカバ。ちなみに、右奥の器やマグカップはカバの置物と同じ作家の作品だそう。作風の振り幅が大きい(写真撮影:末吉陽子)

【画像7】「栗男(くりおとこ)」と呼ばれるお香立て。なんとも絶妙な表情が、見る者を脱力させる(写真撮影:末吉陽子)

【画像8】一方で、こんなイカつい置物も。ドラゴンのウロコの一枚一枚がしっかり表現された緻密な仕事ぶりは見事! コンクリート打ち放しのデザイナーズルームなんかに合いそう(写真撮影:末吉陽子)

【画像9】今年の干支・猿の置物も愛くるしい焼き物に。ひょうきんな表情に癒やされる(写真撮影:末吉陽子)

【画像10】4万5000円の猫の置物は一目惚れで購入する人も多いとか。この子が玄関で待っていてくれたら、仕事の疲れも吹っ飛びそう(写真撮影:末吉陽子)
器だけでなく調度品やオブジェ的なものも多いので、お部屋にアクセントを加えたいときにもぴったり。
そのハイセンスかつ強烈な個性で、インテリアの核として活躍しそうです。
このようにカタチはさまざまですが、土の温もりや柔らかな色合いといった焼き物ならではの良さを追求している点は、多くの作品に共通しているようにも感じられました。さまざまなデザインがあるからこそ、自分好みの一品を見つけられる笠間焼。ぜひ、暮らしに取り入れてみてはいかがでしょうか?
●取材協力・回廊ギャラリー 門元画像url http://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2016/02/kasama_main.jpg
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